もこもこの上着を着た幼児が母親のスカートを握ったまま立っている後ろ姿。離れたくない気持ちを体で伝えている場面のイメージ 🤝 療育・支援サービス
療育・支援サービス 公開: 2026年5月10日

療育の母子分離はいつから?泣いて離れられない子への考え方と母子通園(親子通園)との違い・事業所への伝え方

この記事の目次
  1. 療育の母子分離とは?母子通園(親子通園)との違い
  2. 母子分離で泣く・固まる・後追いするのは自然な反応
  3. 「分離させたら慣れる」と言われたときの考え方
  4. 事業所への伝え方と相談の例文
  5. 分離の見直しや別の事業所を考えるサイン
  6. 親の時間が足りないときの現実的な工夫
  7. まとめ

教室の入口で足が止まる。先生に抱き取られた瞬間に泣き声が廊下まで響く。車に戻ってエンジンをかけても、その泣き声が耳から消えない。先生からは「お母さんも子離れして、分離させたら慣れますよ」と言われた。でも今はまだ、泣いている子を置いて帰る決心がつかない。先にお伝えすると、療育の母子分離は年齢で一律に決まるものではなく、無理に離さなくて大丈夫です。この記事では、親が付き添う母子通園(親子通園)と母子分離(単独通園)の違いとねらい、泣く子への段階的な慣らし方、事業所への伝え方の例文、見直しのサイン、付き添いの時間が足りないときの工夫を順に見ていきます。

療育の母子分離とは?母子通園(親子通園)との違い

母子通園は保護者が一緒に部屋にいて活動する方式、母子分離は子どもだけが部屋に入り保護者は外で待つか帰る方式です。どちらが上という関係ではなく、ねらいが違います。

母子通園(親子通園)母子分離(単独通園)
部屋にいる人子ども+保護者+職員子ども+職員
主なねらい親子の関わり方を一緒に学ぶ。子どもが場所と人に安心する保護者以外の大人や友だちと過ごす経験。集団の中での活動
向いている時期通い始め、年齢が低い、新しい場所が苦手場所と職員に慣れたあと。園への移行を見据える時期
保護者の負担時間の拘束が大きい送迎のみ。仕事や下の子の世話と両立しやすい
よくある呼び方親子通園・母子通園・親子クラス単独通園・分離通園・毎日通園クラス

母子通園のねらいは、子どもを慣らすためだけではありません。こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、事業所が行う家族支援の内容として、保護者がこどもの発達状況や特性を理解するための相談援助や、支援場面を通じた学びの機会の提供を挙げています。保護者がその場にいることは、支援の邪魔ではなく、支援の一部として位置づけられています。

方式は事業所によって大きく違います。さいたま市の療育センターさくら草では、週3〜5日の通園日の中に母子で通う日と子どもだけで通う日の両方があると案内しています。堺市の障害福祉のしおりでは、毎日通園クラスは原則として単独通園、親子通園は別のクラスとして分けています。同じ市の中でも施設ごとに違うので、通っている事業所のやり方がすべてではない、と覚えておいてください。年度の途中から入所した場合も、最初は付き添いや短時間から始める流れは同じです。

センターと民間の事業所でも体制が違います。違いを整理したい方は児童発達支援センターと事業所の違いを先に読むと、自分の子の通い先がどのタイプか分かります。

母子分離で泣く・固まる・後追いするのは自然な反応

分離の場面で泣く、固まる、追いかけてくる。どれも、保護者を安心の拠りどころにしている子の自然な反応です。

ガイドラインは家族支援のねらいの最初に、アタッチメント(愛着)の形成を置いています。子どもが保護者を信頼し、安定した関係を土台にして周りの人と関係を広げていく、という考え方です。離れるときに泣くのは、その土台が育っている証拠でもあります。泣かずに離れられる子が進んでいて、泣く子が遅れている、という話ではありません。

慣れるまでの時間には幅があります。数回で泣かなくなる子もいれば、数か月かけて少しずつ泣く時間が短くなる子もいます。新しい場所や音、人の多さが苦手な特性があれば、慣れるのに時間がかかるのは当然です。「母子分離不安」という言葉を耳にすると病名のように感じますが、分離を不安がること自体は、幼い子どもに広く見られる姿です。

ベンチで大人の両手が子どもの背中を抱き寄せている手元。泣いた子を受け止めている場面のイメージ

🌱 泣いて離れられないのは、親の育て方のせいではありません

ガイドラインは、保護者の気持ちを受け止め、保護者の意思を尊重する姿勢が家族支援の基本だと示しています。「今はまだ離したくない」という気持ちは、尊重されるべき保護者の意思です。

「分離させたら慣れる」と言われたときの考え方

先生の言葉は、経験から来る見立てとして聞いておいて構いません。ただし、分離するかどうかと、いつ・どう分離するかは別の話です。

「分離させたら慣れる」は、多くの子を見てきた職員の実感です。一方で、ガイドラインは、保護者がこどもの障害の特性を理解していく過程やその形は家族ごとに異なる、と明記しています。職員の見立てと、親の「まだ無理に離したくない」という気持ちは、どちらか一方が正しいものではありません。両方を材料にして、段階を決めていけばいい話です。

段階を踏むなら、次のような順番があります。

1
同じ部屋の端で見守る活動には入らず、部屋の隅の椅子に座る。子どもが振り返ったときに姿が見える位置から始めます。
2
短時間だけ部屋を出る「お茶を飲んで戻るね」と予告して5分だけ出る。約束どおりに戻ることを何度も見せます。
3
離れる時間を少しずつ伸ばす5分が平気なら15分、1つの活動の間、と伸ばします。戻る時間は子どもに分かる形で伝えます。
4
迎えの時間だけ決めて離れる「おやつが終わったら迎えに来る」のように、出来事で区切ると小さい子にも分かりやすくなります。

声かけには型があります。「泣かないで」「がんばって」よりも、「泣いてもいいよ。終わったら必ず来るね」のほうが、子どもは戻ってくることを信じやすくなります。別れ際を長引かせず、同じ言葉で同じように手を振る。毎回同じ型にするほど、子どもは先の見通しを持ちやすくなります。

行きしぶりの理由が分離以外にもありそうなときは、療育に行きたがらないときの対応で理由の切り分け方をまとめています。

事業所への伝え方と相談の例文

「まだ離したくない」は、わがままではなく、支援計画に反映されるべき保護者の意向です。遠慮せず伝えて構いません。

ガイドラインは、家族からの相談に対する適切な助言を家族支援のねらいの一つに挙げています。保護者が迷いを相談し、事業所が一緒に段階を考えるのは、もともと想定されている流れです。伝えるときは、気持ちと希望する段階を具体的に言うと、話が進みます。

言いにくい言い方こう伝える
「分離はまだ無理です」「今はまだ無理に離したくない気持ちがあります。まず部屋の端で見守る形から始められますか」
「泣かせたくないんです」「泣いたあとに活動へ入れているか、様子を教えていただけますか。それを見て次の段階を決めたいです」
「先生のやり方に不安があります」「離れる時間を5分から伸ばしていく形で、一緒に進め方を決めさせてもらえますか」

伝えたあとは、その日の迎えのときに「今日は泣いたあとどうでしたか」と毎回聞いておくと、次の段階へ進む判断がしやすくなります。先生から見た子どもの様子は、親が見ている泣き顔とは違う情報です。

分離の見直しや別の事業所を考えるサイン

泣くこと自体はサインではありません。見るのは、泣いたあとの姿と、家に帰ってからの姿です。

✅ 事業所に見直しを頼む目安

  • 泣いたあと活動に入れない日が、2〜3週間続いている
  • 帰宅後に眠れない、食べない、夜泣きが増えたなど、生活の崩れが続いている
  • 段階を踏みたいと伝えても、分離の方式しか選べないと言われた
  • 慣らしの進め方について、職員と親の間で情報のやりとりがほとんどない
  • 分離の日の前日から、家で強い不安を見せるようになった

当てはまる項目が複数あるなら、まずは今の事業所に段階の見直しを頼みます。それでも方式が変えられないなら、別の事業所や、親子通園のクラスがある児童発達支援センターを見学する選択肢があります。契約は事業所ごとに結ぶので、併用や変更はできます。手続きの順番は自治体によって異なるため、相談支援専門員か市区町村の障害福祉の窓口に先に確認してください。

分離を不安がる様子が強く、家の中でも保護者が見えないと泣き続けるような状態が長く続くときは、療育の中だけで抱えず相談先を広げます。児童発達支援センターの相談窓口、自治体の発達相談、かかりつけの小児科医が入口になります。どこに連絡すればいいか迷うときは、発達相談の窓口一覧から近い窓口を選べます。

親の時間が足りないときの現実的な工夫

付き添いが続くと、仕事や下の子の世話が回らなくなります。親の時間が足りないことも、方式を考える正当な理由です。

ガイドラインは、家族のレスパイト(休息)の時間を確保したり、就労による預かりの必要に応えたりするための延長支援を、家族支援の内容として挙げています。親が休む時間や働く時間を確保することは、支援の目的の中に入っています。付き添いがしんどいと伝えることに、後ろめたさは要りません。

工夫中身
付き添い前提の事業所から分離型へ移る慣らしが進んだ時点で、単独通園のクラスや事業所に移る。慣らしの実績を次の事業所に引き継ぐ
送迎のある事業所を選ぶ民間の児童発達支援事業所には送迎付きの所が多く、親の拘束時間が送迎分だけ減る
幼稚園・保育園との並行通園園に通いながら週1〜2日だけ療育に通う。園で分離に慣れ、療育は親子の日にする組み合わせもできる
付き添いを家族で分ける父親、祖父母が付き添う日を作る。保護者が替わっても慣らしの型は同じにする

並行通園の組み立て方は療育と幼稚園の並行通園で、週の回数や園への伝え方まで整理しています。

まとめ

  • 母子通園は親子の関わり方を学ぶ場、母子分離は保護者以外の人と過ごす経験の場。ねらいが違うだけで、上下はありません
  • 分離の時期は年齢で一律に決まらず、事業所やクラスの方式で変わります。同じ市の中でも施設ごとに違います
  • 泣く・固まる・後追いは、保護者を安心の拠りどころにしている自然な反応。慣れるまでの時間には幅があります
  • 無理に離さなくて大丈夫。部屋の端で見守る、5分だけ出る、と段階を踏む方法があり、事業所に頼めます
  • 付き添いの時間が足りないときは、分離型への移行、送迎のある事業所、並行通園という通い方の変更で道が開けます

今夜はここまでで大丈夫です。明日の迎えのときに、先生に「今日は泣いたあと、活動に入れましたか」と一言だけ聞いてみてください。その答えが、次の段階を決めるいちばん確かな材料になります。

よくある質問

療育の母子分離は何歳からが普通ですか?

国のガイドラインに「何歳から分離」という決まりはなく、事業所やクラスの方式で変わります。親子通園を2歳から、単独通園を年少からと分けている施設もあれば、同じ週の中に親子の日と単独の日を置く施設もあります。年齢よりも、その子がその場に安心できているかで考えるものです。

母子分離で泣き続けるのは、療育が合っていないサインですか?

泣くこと自体は合っていないサインではありません。慣れるまでの時間には幅があり、数回で落ち着く子も、数か月かかる子もいます。見るべきは、泣いたあとに活動へ入れているか、帰宅後の様子が重すぎないかです。そこが続けて崩れているなら、方式の見直しを事業所に相談する材料になります。

親が付き添う母子通園のままでは、子どもの成長が遅れませんか?

付き添いが成長を妨げるとは、国のガイドラインには書かれていません。こども家庭庁のガイドラインは、保護者が支援の場面を通じて関わり方を学ぶことを家族支援の内容として挙げています。親子通園には親子通園のねらいがあり、分離はその先に自然と来る段階の一つです。

年度の途中から通い始めても、同じように慣らしてもらえますか?

はい。入所の時期に関係なく、最初の数回は短時間や付き添いから始める形が一般的です。先に通っている子が慣れている分、最初は差が目立って見えますが、それは比べる対象が違うだけです。契約時や初回に、慣らしの進め方を聞いておくと安心です。

付き添いが仕事と両立できません。どうしたらいいですか?

分離型の事業所、送迎のある事業所、幼稚園や保育園との並行通園など、通い方そのものを変える選択肢があります。相談支援専門員や市区町村の障害福祉の窓口に、付き添いが難しい事情を正直に伝えると、条件に合う事業所を一緒に探してもらえます。

参考・出典

本記事は公的機関等の公開情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、医学的な診断・助言に代わるものではありません。 制度の内容はお住まいの自治体や時期によって異なる場合があります。最新の情報は各公式窓口でご確認ください。