🔍 診断・特性の理解 言葉の遅れは発達障害?2〜3歳で発語が遅いときの考え方と相談先
この記事の目次
「ワンワン」も「ママ」も、まだ数えるほど。同じ月齢の子が公園で「あっち行く」と話しているのを見て、思わず我が子の顔を見てしまう。3歳児健診で思い切って聞いてみたら、「もう少し様子を見ましょう」で終わってしまった——。
焦る気持ちも、「考えすぎかも」と打ち消したくなる気持ちも、どちらも自然なものです。先に結論をお伝えすると、言葉の遅れがあることと、発達障害であることはイコールではありません。ことばが遅れる背景はいくつもあり、聞こえの問題のように確かめ方がはっきりしているものもあります。この記事では、考えられる背景、母子手帳にある目安の読み方、「様子見」と言われた後の動き方、言語聴覚士(ST)につながるまでの流れ、そして待つ間に家でできる関わりまでを順に整理します。
言葉の遅れは発達障害?理由は1つではありません
言葉の遅れには、いくつもの背景があります。発達障害はそのうちの1つの可能性にすぎません。
石川県言語聴覚士会は、ことばの発達が遅れる主な原因として4つを挙げています。1つ目は難聴で、聞こえにくい状態が続くとことばが遅れます。2つ目は知的発達の遅れで、ことばを聞き取る・理解する・覚えることが全体に苦手になります。3つ目は人への関心の向き方で、目が合いにくいなど人への関心が薄いと、ことばを身につける流れがスムーズに進みにくくなります。4つ目は、ほかの3つがないのにことばに関係することだけが大きく苦手になるタイプです。
| 考えられる背景 | 家で気づきやすいこと | 確かめられる場所 |
|---|---|---|
| 聞こえ(難聴) | 後ろから名前を呼んでも振り向かないことがある | 耳鼻咽喉科 |
| 知的発達 | ことばだけでなく、遊び方や身の回りのことも全体にゆっくり | 小児科の発達外来・療育センター |
| 人への関心の向き方 | 目が合いにくい。指さしで「見て」と伝えてくることが少ない | 保健センターの発達相談・発達外来 |
| ことばだけの苦手さ | 遊びややりとりは年齢なりなのに、話すことだけが出てこない | 言語聴覚士のいる医療機関・療育 |
この表は「当てはまったらこれ」と決めるためのものではありません。家での様子は背景が違っても似て見えることがあり、見分けるのは専門職の仕事です。表の右端を見てほしいのは、どの背景でも、確かめられる場所がちゃんとあると知っておいてもらうためです。
中でも聞こえは、最初に確かめておきたいところです。国立成育医療研究センターは、生まれつきの難聴はかつて3歳児健診などで「ことばの遅れ」として見つかっていた、と説明しています。また滲出性中耳炎では、鼓膜の内側に液がたまって軽いものから中くらいの難聴が起こります。「なんとなく聞こえが悪い」程度の変化なので、家では気づきにくいのです。
🌱 あなたの話しかけ方のせいではありません
専門職が挙げる言葉の遅れの背景は、聞こえ・知的発達・人への関心の向き方・ことばだけの苦手さです。親の愛情や話しかけの量が足りなかったから、という話ではありません。いま調べているその行動が、子どもにとってのいちばんの味方です。
2歳・3歳の言葉の目安は?母子手帳の「保護者の記録」を見てみる
月齢ごとの目安を探すなら、まず手元の母子健康手帳を開いてみてください。健診の前に記入する「保護者の記録」のページに、ことばに関する質問が載っています。
- 1歳6か月の頃: 「ママ、ブーブーなど意味のあることばをいくつか話しますか」「うしろから名前を呼んだとき、振り向きますか」
- 2歳の頃: 「2語文(ワンワンキタ、マンマチョウダイ)などを言いますか」「テレビや大人の身振りのまねをしますか」
- 3歳の頃: 「自分の名前が言えますか」「耳の聞こえが悪いのではないかと気になりますか」
ここで知っておきたいのは、これが合格・不合格のテストではないということです。手帳は、その頃の様子を書き留めて、健診で専門職と話すための記録です。「いいえ」に丸をつけたページは、健診で質問するときのメモとしてそのまま役立ちます。
発達の目安には、もともと幅があります。同じ手帳の発達の欄でも、首すわりやひとり歩きの時期は1点ではなく、約半数の子ができる時期から9割の子ができる時期までの矢印で示されています。ことばも、1つの質問の答えだけで先の見通しが決まるものではありません。
「様子を見る」か「相談する」か、迷ったときの考え方
迷ったら、相談する側に倒して大丈夫です。相談したからといって診断がつくわけではなく、「今は様子を見ましょう」と言ってもらえること自体が、1つの安心材料になります。
判断の手がかりとして知っておきたいのが、専門職はことばの数だけを見ているわけではないという点です。国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターによると、1歳6か月児健診では、ことばを話し始めるまでの「やりとりの土台」を確かめます。名前を呼んだときの反応、大人の動作をまねること、指さしで欲しいものや見つけたものを伝えること、大人が指さした先を目で追うこと、積み木を電車に見立てるような遊びなどです。3歳児健診では、会話の様子に加えて、特定のものへの強いこだわり、注意や集中、動きの多さについても保護者から聞き取ります。
つまり相談の場で役に立つのは、「何語言えるか」だけでなく、ことばの手前のやりとりが家でどう見えているかという情報です。具体的には、次のようなことです。
- 名前を呼んだとき、振り向くか
- 欲しいものがあるとき、どうやって伝えてくるか(指さし・手を引く・泣くなど)
- 大人の言う簡単なことば(「おいで」「ちょうだい」など)が分かっていそうか
- どんな遊びが好きか
これは判定のためのリストではなく、相談のときに伝える材料です。聞こえについては、少しでも気になったら先に耳鼻咽喉科で確かめてもらうと、そのあとの相談がずっと進めやすくなります。
3歳児健診で「様子見」と言われたら
「様子見」は「問題なし」でも「放っておく」でもありません。専門の目でもう一度見る時期を、少し先にのばしたという意味です。
健診の場は時間が短く、人見知りや眠気でふだんの様子が出ないこともよくあります。だからこそ、様子見と言われたら「次はいつ、どこで見てもらえますか」と確認しておくのがおすすめです。健診のあとにどんな形でもう一度見てもらえるかは、自治体によって違います。
聞きそびれてしまっても大丈夫です。石川県言語聴覚士会も、ことばの相談の入口として健診の際に保健所や保健センターへ尋ねることを案内しています。健診の日を過ぎていても、保健センターに電話して「3歳児健診で様子見と言われたけれど、やっぱり気になる」と伝えてかまいません。電話での切り出し方は発達障害の相談窓口はどこ?年齢別の相談先一覧に例文をまとめています。
相談の前には、気になることを短くメモしておくと話が早く進みます。前の見出しで挙げた4つに、いま言える単語と、聞こえで気になることを足せば十分です。
✅ 相談の前にメモしておくこと
- 名前を呼んだときの反応
- 欲しいものの伝え方(指さし・手を引く・泣くなど)
- 分かっていそうなことば
- 好きな遊び
- いま言える単語
- 聞こえで気になること
相談先と、言語聴覚士(ST)につながるまでの流れ
ことばの専門職は言語聴覚士(ST)です。ただ、多くの場合はいきなりSTに会うのではなく、保健センターやかかりつけ医を通ってたどり着きます。
順番は地域や子どもの様子によって前後します。保健センターから直接、療育センターや児童発達支援センターを紹介されることもありますし、1と2を同時に進めてもかまいません。
どの科に行けばよいか迷うときは発達障害は何科を受診する?子どもの受診先の選び方を、STが療育の時間に何をしているかは療育のOT・ST・PTとは?を見てください。発達外来の初診が数か月先になった場合の過ごし方は発達外来の予約が取れない!待機中にできることにまとめています。
待つ間に、家でできることばの関わり
相談の予約を待つ間も、家でできることはあります。特別な教材はいりません。国立障害者リハビリテーションセンター病院の言語聴覚士は、話しことばは「わかることがら」→「わかることば」→「言えることば」の順に土台を積み上げていく、と説明しています。言わせる練習よりも、分かる経験を毎日の生活の中で増やすことが中心です。

同じページで紹介されている関わり方を、夜の家庭で使いやすい形にまとめると次のようになります。
- 毎日の流れをそろえる: 起きたら着替える、朝ごはんを食べたら出かける、のように順番を一定にすると、子どもが次に起きることを予想しやすくなります
- 短く、いつも同じ言い方で: 「ごはんよ」のような短いことばに身ぶりを添えて、毎回同じように声をかけます
- いまの伝え方を受け止めてから、次を見せる: 手を引く・指さしなど子どもなりの伝え方に「わかったよ」と応えてから、「ちょうだい、だね」と別の言い方をそっと見せます
- 頼りたくなる場面を少しつくる: 好きなおもちゃを、見えるけれど手の届かない場所に置いてみます。大人に伝える理由が自然に生まれます
- 誘う姿を見せる: 「いっしょにしよう」と大人が誘う姿を見せて、人と遊ぶ楽しさを味わえるようにします
3歳ごろで単語は出ているのに会話がかみ合わない場合について、発達障害情報・支援センターは、大人が相づちを打ちながら短めの返事を返し、お互いのスピードを合わせる工夫を紹介しています。絵や動作など目に見えるものを使って、やりとりの始まりと終わりを分かりやすくする方法もあります。
全部をやる必要はありません。今日できそうなものを1つ選ぶだけで十分です。
まとめ
- 言葉の遅れがあることと、発達障害であることはイコールではありません。聞こえ、知的発達、人への関心の向き方、ことばだけの苦手さなど、背景はいくつもあります
- 母子手帳の「保護者の記録」には、1歳6か月・2歳・3歳の頃のことばの質問があります。「いいえ」は診断ではなく、健診で話すきっかけです
- 専門職は、ことばの数だけでなく、呼んだときの反応や指さしなど「ことばの手前のやりとり」を見ています。相談ではその様子を伝えると役に立ちます
- 3歳児健診の「様子見」は、もう一度見る時期をのばしたという意味です。次の予定を確かめ、気になれば健診を待たずに保健センターへ相談できます(流れは自治体によって異なります)
- 待つ間は、短いことばと身ぶりで話しかけ、子どもなりの伝え方を受け止めてから次の言い方を見せる関わりが、家で続けやすい方法です
今夜はここまでで大丈夫です。明日やることは1つだけ。母子手帳の「保護者の記録」のページを開いて、いま気になっていることを余白に1行書き足してみてください。それが、相談のときにそのまま使えるメモになります。
よくある質問
母子手帳の「2語文を言いますか」に「いいえ」をつけたら、発達障害ということですか?
いいえ、手帳の質問は診断のためのものではなく、その頃の様子を記録して健診で話すためのものです。ことばが遅れる背景には、聞こえ・知的発達・人への関心の向き方・ことばだけの苦手さなど、いくつかの可能性があります。「いいえ」がついたときは、健診や保健センターで話題にするきっかけとして使ってください。
3歳児健診で「様子を見ましょう」と言われました。次の健診まで待つしかないですか?
待つ必要はありません。様子見は、専門の目でもう一度見る時期を先にのばした、という意味です。気になることが増えたときや、不安で眠れないときは、健診の結果を待たずに市区町村の保健センターへ電話して、保健師さんに相談して大丈夫です。
新生児のときの聴覚検査でパスしていれば、聞こえは心配しなくていいですか?
生まれたときに問題がなくても、あとから聞こえが落ちることがあります。たとえば滲出性中耳炎では、鼓膜の内側に液がたまって、軽いものから中くらいの難聴が起こります。家では気づきにくい変化なので、ことばが気になるときは一度、耳鼻咽喉科で聞こえを確かめてもらうと安心です。
言語聴覚士(ST)には、どこで会えますか?
病院のリハビリテーション科や小児科の発達外来、児童発達支援センター、療育を行う事業所などにいます。保健センターの発達相談に来ていることもあります。各都道府県の言語聴覚士会のホームページで、子どもを対象にしている施設を探せる場合もあります。
家でことばの練習をたくさんさせたほうがいいですか?
言わせる練習を増やすより、毎日の生活の中のやりとりを大事にするほうが、親子ともに続けやすい方法です。短いことばと身ぶりで話しかける、子どもの指さしや手引きを受け止めてから言い方を見せる、といった関わりを言語聴覚士もすすめています。