🤝 療育・支援サービス 療育のOT・ST・PTとは?作業療法・言語聴覚療法・理学療法で何をするのか
この記事の目次
連絡帳に「今日はOTでした」と書いてある。送迎のときにちらっと見えたのは、子どもがブランコに乗って笑っている場面だけだった。面談で「感覚の入り方を見ています」と説明されたけれど、家で調べても専門用語ばかりで、あの45分に何が起きていたのかは結局分からないまま——。
先にお伝えすると、OT・ST・PTに上下はありません。見ている場所が違うだけです。この記事では、3つの専門職がどんな困りごとのときに登場して、その時間で実際に何をして、家に何を持ち帰れるのかを1枚の表に整理します。あわせて、ブランコや粘土が遊びに見える理由、園に共有したいのに難しいと言われたときの道すじ、そして内容を今から見直す方法までまとめます。
療育のOT・ST・PTとは?3つの専門職を先に整理
まず名前の中身をそろえます。OT・ST・PTは、それぞれ国家資格の呼び名を英語の頭文字にしたものです。
- OT=作業療法士。法律では、主に応用的な動作の能力や社会に適応する力の回復を図る仕事と決められています。手芸や工作などの作業を通して行うと書かれています
- ST=言語聴覚士。声の機能・ことばの機能・聞こえの維持や向上を図る仕事です。ことばの訓練のほか、必要な検査や助言、指導も含まれます
- PT=理学療法士。主に基本的な動作の能力の回復を図る仕事です。運動をしてもらうほか、温める・電気で刺激するといった物理的な手段も使います
法律の言葉なので少し硬いのですが、並べると差がはっきりします。PTは「立つ・歩く」といった体の土台、OTはその土台を使って生活の中の作業をこなすところ、STはことばと聞こえ、そして食べる・飲み込むところです。土台から生活へ、という順に並んでいると考えると覚えやすくなります。
ここで大事なのは、療育の場での呼び分けです。児童発達支援や放課後等デイサービスでは、この人たちが「機能訓練担当職員」という立場で支援に加わっている場合があります。名簿に職種名が書かれていなくても、中にいることはあります。
どの困りごとのとき、どの職種に会うことが多いか
ここがこの記事の中心です。「何に困っているか」から見ると、誰の時間なのかが見えてきます。
| 職種 | よく入り口になる困りごと | その時間ですることの例 | 家に持ち帰れるもの |
|---|---|---|---|
| OT(作業療法士) | ボタン・はさみ・箸が使いにくい。字がマスからはみ出す。座っていられない。特定の音や感触が苦手 | 手先を使う遊び、体を大きく動かす遊び、道具の持ち方、机まわりの環境の調整 | 使いやすい道具の形、椅子と机の高さ、家でもできる遊びの型 |
| ST(言語聴覚士) | ことばが出てこない。発音が聞き取りにくい。やり取りが続かない。食べこぼしや飲み込みが気になる | ことばのやり取り、絵や写真のカードの使い方、口や舌の動き、食事の姿勢と食べ物の形 | 話しかける順番、返事を待つ長さ、指さしやカードなど伝える手段 |
| PT(理学療法士) | よく転ぶ。姿勢がすぐ崩れる。階段や片足立ちが苦手。歩き方が気になる | 姿勢を保つ練習、移動の練習、補助的な用具の調整 | 座るときの支え方、靴やクッションの選び方、家の中の動線 |
3つとも、こども家庭庁が示す支援の5つの領域のどこかに対応しています。健康・生活、運動・感覚、認知・行動、言語・コミュニケーション、人間関係・社会性の5つです。OTとPTは主に「運動・感覚」、STは主に「言語・コミュニケーション」に近い場所を見ています。ただしガイドラインは、5つの領域の内容はお互いに関連していて重なる部分もある、と明記しています。だから座る姿勢の話とことばの話が同じ面談で出てきても、それは自然なつながりです。
いちばん見落とされやすいのが、右端の「家に持ち帰れるもの」です。療育の時間そのものは週に数十分から数時間ですが、家で過ごす時間はその何十倍もあります。担当者に聞くべき質問は「今日は何をしましたか」よりも、「家では、どこを真似すればいいですか」のほうです。

ブランコもトランポリンも、遊んでいるだけではない
送迎で見える場面がブランコやトランポリンだと、遊ばせてもらっているだけに見えることがあります。ここには理由があります。
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、「運動・感覚」の領域で使う感覚を具体的に挙げています。視覚・聴覚・触覚・嗅覚に加えて、「固有覚」と「前庭覚」です。そして、これらの感覚を十分に活用できるよう遊び等を通して支援すると書かれています。聞き慣れない2つの言葉が、ブランコやトランポリンの正体です。
- 前庭覚: 体が傾いた・回った・揺れたという感覚です。ブランコ、トランポリン、回転する遊具がここに当たります
- 固有覚: 自分の手足がいまどこにあって、どれくらいの力が入っているかという感覚です。押す・引く・ぶら下がる・粘土をこねる動きがここに当たります
この2つの感覚の入り方は、外から見えません。だから専門職は、遊具に乗っているときの子どもの様子を見ながら、どの感覚がどう入っているかを確かめます。粘土やスライムも同じで、指先でつぶす・ちぎるという動きの中に、力の入れ方の情報が含まれています。支援の考え方としては「感覚統合」という言葉で説明されることもあります。
ガイドラインは同時に、感覚の過敏や鈍麻といった感覚の特性を踏まえて、環境を調整する支援も挙げています。つまり「慣れさせる」だけでなく、苦手な刺激を減らす方向の工夫も支援に含まれます。音や感触の苦手さそのものについては子どもの感覚過敏とは?7つの感覚で見るサインで詳しく扱っています。
⚠️ ここに注意
遊具を使った時間が「何回で、どれくらい変わるか」を数字で約束する説明には、いったん立ち止まってください。ここまで見てきたとおり、公的なガイドラインが定めているのは支援の内容であって、効果の量ではありません。気になったら、その場で「何を見ているところですか」と聞き返して大丈夫です。
「うちの子はSTだけでOTがない」はよくある形
事業所を比べていると、職種の顔ぶれがまるで違うことに気づきます。これは事業所の努力不足ではなく、制度の作りがそうなっているためです。
児童発達支援事業所で必ず置くことになっているのは、管理者、児童発達支援管理責任者、児童指導員または保育士です。そのうえで、日常生活に必要な機能訓練を行う場合に機能訓練担当職員を、医療的ケアを行う場合に看護職員を置く形になっています。つまりOT・ST・PTは、全ての事業所に必ずいる職種ではありません。
一方でこども家庭庁のガイドラインは、児童発達支援センターについて別の書き方をしています。幅広い発達段階や多様な特性に応じるため、保育士・児童指導員に加えて理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・心理担当職員・看護職員を配置することが望ましい、という内容です。多職種が連携するチームで支援できる体制を整えることが期待されています。センターと事業所で顔ぶれが違って見えるのは、この差が効いています。センターと事業所の役割の違いは児童発達支援センターと事業所の違いにまとめました。
だから「STの時間しかない」と気づいたときに取れる道は、次の3つです。
1つ目は、いまの事業所に聞くこと。在籍している職種と、その職員が関われる曜日や回数を確かめます。非常勤で月に数回だけ来る形もあるので、「いる・いない」より「何回関われるか」を聞くほうが実情に近づきます。
2つ目は、ねらいの側から相談すること。「手先の困りごとを重点的に見てほしい」と伝えれば、担当がOTでなくても、個別支援計画に入った時点で時間の使い方は変わります。職種を探すより、こちらのほうが早く動く場合があります。
3つ目は、2か所目を検討すること。受給者証に書かれた支給量の範囲内なら、別の事業所と曜日を分けて契約できます。組み立て方は相談支援専門員か、市区町村の障害福祉の窓口に相談してください。
個別と集団の配分をどう考えるかは療育は個別と集団どっち?で整理しています。
「園では実践が難しい」と言われたときの道すじ
療育でうまくいったやり方を園の先生に伝えたら、「集団の中でそれをやるのは難しい」と返ってきた。この行き止まりは、実際によく起きます。ここで覚えておきたいのは、家庭が通訳役を一人で引き受けなくてよい、ということです。制度の側に、専門職が園へ出向く仕組みが用意されています。
それが保育所等訪問支援です。こども家庭庁のガイドラインは、この支援の進め方をはっきり書いています。対象となるこどもを集団生活に合わせるのではなく、こどもの特性に応じて集団生活の環境を調整し、活動の流れを変えたり工夫したりする。それが行われるよう進めていく必要がある、という内容です。子どもを園に合わせるのではなく、園の側を動かすための仕組みだという位置づけです。
中身は3つに分かれます。子ども本人への支援、訪問先の職員への支援、そして家族への支援です。訪問支援員になれるのは、児童指導員・保育士・理学療法士・作業療法士・心理担当職員などです。障害児支援についての知識と相当の経験があり、集団生活に適応するための専門的な技術を持つ人、という条件がついています。
✅ 園との橋渡しで確認したいこと
- いまの個別支援計画に、園でも続けたいことが書かれているか
- 事業所から園へ、直接連絡してもらえる経路があるか
- 保育所等訪問支援を使えるか(受給者証への追加と申請が必要)
- 訪問の頻度と時間の目安。曜日や時間帯は園と調整できるか
- 訪問のあとに、園の先生とのふり返りの場を持てるか
訪問の頻度は「2週間に1回」のように機械的に決めるものではなく、子どもの状態に応じて柔軟に決めることになっています。新しい環境で不安定になっている時期は多めに、園の受け入れが整ってきたら間隔をあける、という動かし方が想定されています。1回の提供時間は30分以上と決められていて、本人や職員への支援に1時間程度、訪問後の報告に30分程度が基本の形です。
保育所等訪問支援は保護者の申請で使う仕組みなので、まずは市区町村の障害福祉の窓口か相談支援専門員に「使えますか」と聞くところから始まります。
内容は、今からでも見直せる
「もっと早く感覚のことを相談していれば」「去年のうちにOTにつなげていれば」。調べれば調べるほど、そう思う瞬間があります。ここは、はっきりお伝えしておきたいところです。
個別支援計画(児童発達支援計画)は、おおむね6か月に1回以上、実施状況を確かめるモニタリングを行うことになっています。そして子どもの状態や家庭の状況に変化があった場合は、6か月を待たずに行う必要があるとガイドラインに書かれています。つまり、次の更新まで待つ決まりにはなっていません。
計画に書かれた目標は、最長でも6か月後までに達成を目指す形で立てられ、1か月から3か月で達成する目標も積極的に検討するよう示されています。半年単位で組み替えていくことが、もともと前提になっているわけです。手応えが見えないときの考え方は児童発達支援は意味ない?個別支援計画の確認方法にまとめています。
🌱 遅すぎるということはありません
ここまで見てきたとおり、療育の中身は6か月ごとに見直される前提で作られています。いま気づいたことを次の面談で1つ伝えれば、それが次の計画に載ります。過ぎた時間を取り戻す必要はなく、これからの半年をどう組むかだけを考えれば大丈夫です。
まとめ
- OT・ST・PTに上下はなく、見ている場所が違います。PTは体の土台、OTは生活の中の作業、STはことばと聞こえ・食べることが中心です
- 困りごとから逆に見ると、誰の時間なのかが分かります。担当者には「家ではどこを真似すればいいですか」と聞くのがいちばん役に立ちます
- ブランコやトランポリンは前庭覚、押す・こねる遊びは固有覚に関わります。国のガイドラインも、遊びを通してこれらの感覚を活用できるよう支援すると書いています
- OT・ST・PTは全ての事業所に必ずいる職種ではありません。いないときは、ねらいの側から相談するか、2か所目を検討する道があります
- 園での実践が難しいと言われたら、保育所等訪問支援があります。子どもを集団に合わせるのではなく、園の環境を調整するための仕組みです
- 計画はおおむね6か月に1回以上見直され、状況が変われば6か月を待たずに変えられます(2026年時点・運用は自治体や事業所により異なります)
今夜はここまでで大丈夫です。明日やることは1つだけ。連絡帳か個別支援計画を開いて、「家でも続けてみたいこと」を1行だけ書き出してみてください。次の面談で渡す言葉は、それで足ります。
よくある質問
OT・ST・PTを、親が指名して選ぶことはできますか?
指名の仕組みは制度として決められていません。誰が担当するかは、その事業所に在籍している職種と、個別支援計画で立てたねらいによって決まります。ただし「手先の困りごとを重点的に見てほしい」という希望は伝えられます。面談で希望を出し、いまの体制で対応できるかを聞いてみてください。
療育の時間を、親が見学することはできますか?
事業所によって違います。ガラス越しに見られる部屋がある事業所、月に1回の参観日を設けている事業所、送迎のみで中には入らない事業所があります。見学や体験のときに「普段の様子はどうやって知れますか」と聞いておくと、通い始めてからのずれが減ります。
病院で受けるリハビリと、療育のOTは何が違いますか?
根拠になる制度が違います。医療機関のリハビリは健康保険などの医療の枠組みで行われ、児童発達支援や放課後等デイサービスは障害児通所支援として受給者証で利用します。両方を並行して使っている家庭もあります。回数の上限や自己負担の考え方が別なので、併用を考えるときは市区町村の障害福祉の窓口で確認してください。
「機能訓練担当職員」と書いてあるのは、誰のことですか?
日常生活を送るために必要な機能訓練を担当する職員をまとめて呼ぶ言い方です。作業療法士や言語聴覚士、理学療法士がこの立場で加わっている事業所もあれば、別の資格の職員が担当している場合もあります。重要事項説明書に職種の内訳が書かれているので、そこを見るか、直接聞くのが早いです。
事業所にOTやSTがいるかどうかは、どこで調べられますか?
各事業所が公表している支援プログラムや、ホームページの職員紹介で分かることがあります。載っていない場合は、見学の電話で「常勤で在籍している職種を教えてください」と聞いて構いません。週1回だけ来る非常勤か、毎日いる常勤かでも、関われる回数は変わります。