窓辺に小さな机と椅子がひとつだけ置かれた静かな部屋。一対一で向き合う個別療育の場面をイメージした写真 🤝 療育・支援サービス
療育・支援サービス 公開: 2026年8月15日

療育は個別と集団どっち?個別療育と集団療育の違い・向き不向き・併用の考え方

この記事の目次
  1. 療育は個別と集団どっち?決め手になる2つ
  2. 個別療育と集団療育の違いを整理する
  3. 子どものタイプ別・向いている場面と苦手な場面
  4. 「集団に慣れさせるために集団だけ」は落とし穴
  5. 同じ「集団」でも中身は事業所の体制で決まる
  6. 迷ったら個別支援計画でねらいを確認する
  7. まとめ

見学に行った事業所で「うちは集団での活動が中心です」と言われた。次に見た事業所では「まずは個別からがいいですね」と勧められた。園の先生からは、集団に慣れさせたほうがいいのではと言われている——。どれも間違ったことを言っているようには聞こえないのに、決められないまま2週間が過ぎてしまう。先にお伝えすると、個別療育と集団療育に優劣はありません。決め手になるのは、いま伸ばしたい力は何かと、今の子どもが安心して力を出せる人数はどのくらいか、この2つだけです。この記事では、個別と集団で伸びやすい力の違い、子どものタイプ別の向き不向き、併用と段階的な移行、見学で見るポイント、個別支援計画でねらいを確認する方法までを順に見ていきます。

療育は個別と集団どっち?決め手になる2つ

こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、子ども本人への支援の中身を5つの領域で整理しています。健康・生活、運動・感覚、認知・行動、言語・コミュニケーション、人間関係・社会性の5つです。

この並びを見ると、個別と集団の役割の違いがはっきりします。人間関係・社会性の中には「仲間づくりと集団への参加」が挙げられていて、ここは人が複数いなければ練習になりません。一方で、ことばのやり取りの土台や、机に向かって最後まで取り組む力は、音や人の刺激を減らした一対一の場のほうが手をつけやすくなります。

つまり個別か集団かは、子どもの性格で決めるものではなく、今の目標がどの領域にあるかでほぼ決まります。そしてもう1つ、今の本人が何人までなら落ち着いていられるかという現実の条件が重なります。この2つが交わるところが、いまの答えです。

個別療育と集団療育の違いを整理する

まず言葉の意味をそろえておきます。個別療育は、職員と子どもが一対一で、その子の目標に絞った課題に取り組む時間です。集団療育は、数人の子どもが同じ活動をする中で、順番・やり取り・切り替えといった人との間で起きることを扱う時間を指します。

🧩 個別療育(一対一)

  • 刺激を減らした部屋で、目標を1〜2個に絞って取り組む
  • ことば・机上課題・体の使い方など、土台づくりに向く
  • できた瞬間にその場で返してもらえる
  • 人が増えた場面で同じようにできるとは限らない

👥 集団療育(小集団)

  • 数人で同じ活動をし、順番待ちや役割のやり取りを経験する
  • 指示の聞き取り、切り替え、友達との関わりに向く
  • 園や学校の場面に近い形で練習できる
  • 人数や音が負担だと、参加できないまま時間が過ぎる

もう少し細かく並べると、次のようになります。

見る点個別療育集団療育
何をする時間か一対一で、決めた目標の課題に取り組む数人で同じ活動をし、その中でやり取りを経験する
伸びやすい力ことばの受け取りと表出、着席、手先や体の使い方順番待ち、一斉指示の理解、切り替え、仲間との関わり
向いている場面一斉指示だと固まる/課題の土台がまだこれから一対一ならできるのに、人が増えると崩れる
苦手な場面身についた力が、そのまま集団で出るとは限らない参加の仕方が分からないまま人数の中にいると疲れる
日数・料金への影響週1回でも組み立てやすいねらいによっては一定の回数の参加が必要

料金の考え方は、個別か集団かでは変わりません。障害児通所支援の利用者負担は原則1割で、世帯の所得に応じた月額の上限があります。効いてくるのは通った日数のほうで、上限額に届いていれば日数が増えても負担は増えません。金額の基準は2026年時点のもので、運用は自治体により異なります。頻度そのものの決め方は療育は週何回が適切?にまとめています。

子どものタイプ別・向いている場面と苦手な場面

タイプという言葉を使いますが、これは固定した分類ではありません。半年で入れ替わることも珍しくないので、いまの様子に近いものを探す気持ちで読んでください。

今の子どもの様子まず厚くしたいほうねらいの例
一斉の指示だと動けないが、名前を呼んで伝えれば動ける個別指示を受け取る形を作る。1つずつなら通る状態を確かめる
ことばが出はじめたところ/要求の伝え方を探している個別やり取りの回数を確保し、伝わる経験を積む
人が多い場所で耳をふさぐ、部屋から出てしまう個別から小集団へ段階的に落ち着ける人数を見つけ、そこから1人ずつ増やす
一対一ではできるのに、園では同じことができない集団できる形を、人がいる場面で試す
友達に関わりたい気持ちはあるが、距離感でつまずく集団誘い方・断り方・順番の待ち方を実際の場面で練習する
就学が近く、集団の中で座る時間を増やしたい集団を厚めに、個別も残す一斉指示と着席を、支えのある場で先に経験する

子ども用の木の机と椅子が並ぶ、明るく静かな活動室。人数や部屋の作りで集団活動の負担は大きく変わる

「集団に慣れさせるために集団だけ」は落とし穴

迷ったときにいちばん起きやすいのが、どちらか一方に振り切る決め方です。よく見る二択思考は次の2つで、どちらも途中で行き詰まりやすくなります。

⚠️ ここに注意

「集団に慣れさせたいから集団だけ」は、参加の仕方が分からない状態だと、疲れだけが残る時間になりがちです。逆に「困りが強いから個別だけ」も、一対一で身についた力が人の多い場面でそのまま出るとは限りません。人数を増やす・減らすより先に、本人がその場で何をすればいいか分かっているかを見てください。

制度の側も、この2つを対立させてはいません。こども家庭庁の放課後等デイサービスガイドラインは、特定の領域に重点を置いた支援について、一対一による個別支援だけでなく、一人ひとりのニーズに応じた配慮をしたうえで小集団などで行われる支援も含まれる、と明記しています。個別と集団は、どちらかを選ぶ二択ではなく、ねらいに合わせて配分するものです。

併用のしかたは、大きく3通りです。

組み立て方具体的な形向いているとき
同じ事業所で時間を分ける前半は個別の課題、後半は集団の活動移動を増やしたくない。職員の間で情報をつなげたい
曜日で分ける火曜は個別中心、金曜は集団中心疲れ方や様子の違いを比べて見たい
2か所を併用する個別が強い事業所と集団が強い事業所を組み合わせる片方の事業所だけでは足りない部分がはっきりしている

2か所の併用は、受給者証に書かれた支給量の範囲内で契約できます。その場合は、両方の事業所にねらいを共有してもらうよう頼んでおくと安心です。

段階的に移すときは、いきなり定員いっぱいの集団に入れず、2〜3人の小集団を間に挟みます。個別の時間でうまくいった課題を、そのまま小集団で出してもらうと、本人にとっては同じことの続きになります。中身をそろえて人数だけ変えるのが、いちばん負担の少ない渡し方です。

🌱 いまの選び方は、一生ものの決定ではありません

個別か集団かは、次の見直しのタイミングで何度でも変えられます。半年前に合っていた形が今は合わない、というのは支援がうまく進んだ結果として起こることでもあります。今日の判断で先が決まってしまうわけではありません。

同じ「集団」でも中身は事業所の体制で決まる

見落とされやすいのが、集団という言葉の中身が事業所ごとに、さらには曜日ごとに違うことです。

  • 定員とその日の人数: 定員10名の事業所でも、実際に来ている人数は日によって変わります。4人の日と10人の日では、子どもにとってはまったく別の場です
  • 職員の配置: 集団活動の時間帯に職員が何人いて、1人が何人を見ているか。ここで参加の支えられ方が変わります
  • 個別の枠があるか: 「個別対応もします」と説明されても、決まった枠として週に何回あるのかは別の話です

もう1つ、見学の前に確認できる材料があります。こども家庭庁のガイドラインは、5領域との関係を明確にした支援プログラムを事業所が作り、重要事項説明書や個別支援計画の説明時に保護者へ丁寧に説明したうえで、ホームページなどで公表していくことを求めています。事前に読んでおくと、見学での質問がぐっと具体的になります。

✅ 見学のときに見る・聞くこと

  • 今日の利用人数と定員。曜日によって人数がどれくらい変わるか
  • 集団活動の時間帯に職員が何人いて、1人あたり何人を見ているか
  • 個別の時間は週に何回、1回何分か。誰が担当するか
  • 集団の活動は何人単位か。グループ分けは年齢か、発達の状況か
  • 一斉の指示が通らない子への声かけを、実際の場面で見せてもらえるか
  • 個別で身についたことを集団の場面でどう試すか、つなぎ方を説明できるか
  • 支援プログラムを見せてもらえるか、ホームページで公開されているか

事業所の種類による違いも押さえておくと選びやすくなります。児童発達支援センターと事業所の違い放課後等デイサービスの選び方チェックリストに、見るべき点をまとめています。受給者証を使わない全額自費の教室と比べる段階なら、民間療育は高いけど効果はある?もあわせてどうぞ。

迷ったら個別支援計画でねらいを確認する

考えても決まらないときは、自分で判断しきらなくて大丈夫です。制度の側に、確認と見直しのための正式な手順が用意されています。

児童発達支援や放課後等デイサービスでは、児童発達支援管理責任者が5領域の視点を踏まえたアセスメントを行い、一人ひとりの計画を作ります。この計画には、どんな力をどう伸ばすかというねらいが書かれています。個別と集団の配分は、本来この計画の中身とセットで説明できるはずのものです。

面談で聞いてみる形にすると、次のようになります。

聞きたいことそのまま使える言い方
集団の時間のねらい「今の計画で、集団の活動はどのねらいに対応していますか」
個別の時間のねらい「個別の時間では、どの力を重点的に見ていますか」
つなぎ方「個別で身についたことを、集団の場面でどう試す予定ですか」
配分を変える目安「何ができるようになったら集団を増やす、という目安を計画に書けますか」

計画はおおむね6か月に1回以上モニタリングを行うことになっていて、子どもの状態や家庭の状況が変わったときには6か月を待たずに見直せます。次の更新まで待つ必要はありません。

事業所をまたいで組み立てたいときは、相談支援専門員が入ります。相談支援専門員は子どもや家族との面談で状況や希望を聞き取り、それをもとにした計画を提案する立場です。2か所の併用や日数の変更を考えているなら、事業所より先にここへ相談すると話が早く進みます。手続きの順番や名称は自治体により異なるため、市区町村の障害福祉の窓口でも確認してください。計画の読み方そのものは児童発達支援は意味ない?個別支援計画の確認方法で詳しく扱っています。

まとめ

  • 個別療育と集団療育に優劣はなく、いま伸ばしたい力と、本人が落ち着いていられる人数の2つで決まります
  • 個別はことばや着席などの土台づくり、集団は順番待ち・一斉指示・友達との関わりに向いています
  • どちらか一方に振り切ると行き詰まりやすく、時間・曜日・事業所のいずれかで配分するのが現実的です
  • 段階的に移すときは、中身を変えずに人数だけ2〜3人から増やすと負担が小さくなります
  • 同じ「集団」でも定員・その日の人数・職員配置で中身が変わります。見学では今日の人数と個別の枠を具体的に聞いてください
  • 配分は個別支援計画のねらいと照らして確認でき、おおむね6か月に1回以上、状況が変われば6か月を待たずに見直せます(2026年時点・運用は自治体や事業所により異なります)

今夜はここまでで大丈夫です。明日やることは1つだけ。いま通っている事業所、または見学予定の事業所のホームページを開いて、支援プログラムが載っているかを見てみてください。載っていれば、次の面談で聞くことがそこから見つかります。

よくある質問

個別療育と集団療育は併用できますか?

併用できます。同じ事業所の中で時間や曜日を分ける形も、2か所の事業所を曜日で使い分ける形もあります。受給者証に書かれた支給量(月に使える日数の上限)の範囲内であれば、制度上の問題はありません。組み合わせ方は事業所の空き状況にも左右されるので、児童発達支援管理責任者に相談してみてください。

個別療育とは、具体的に何をする時間ですか?

職員と子どもが一対一で向き合い、その子の目標に絞った課題に取り組む時間です。ことばのやり取り、机に向かう姿勢、体の使い方など、内容は目標によって変わります。人や音の刺激を減らした部屋で行うことが多く、できたことをその場ですぐ返してもらえるのが特徴です。

小学生になってからでも個別療育は受けられますか?

受けられます。放課後等デイサービスでも、集団の活動とは別に個別の時間を設けている事業所があります。ただし全ての事業所が個別の枠を持っているわけではないので、見学の際に「個別の時間は週何回、1回何分か」を具体的に聞いて確認してください。

個別と集団で、利用料は変わりますか?

障害児通所支援の利用者負担は原則1割で、世帯の所得に応じた月額上限があります。個別か集団かで負担の計算方法が変わるのではなく、効いてくるのは通った日数です。上限額に達していれば日数が増えても負担は変わりません。金額の基準は2026年時点のもので、詳しくは市区町村の障害福祉の窓口で確認してください。

集団療育だけ続けていれば、そのうち集団に慣れますか?

慣れる子もいますが、参加の仕方が分からないまま人数の多い場にいる時間が長いと、疲れだけが積み重なる場合もあります。大事なのは人数よりも、その場で本人が何をすればいいか分かっているかです。うまく入れない場面が続くなら、個別の時間で参加の型を作ってから戻す道すじを事業所に相談してみてください。

参考・出典

本記事は公的機関等の公開情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、医学的な診断・助言に代わるものではありません。 制度の内容はお住まいの自治体や時期によって異なる場合があります。最新の情報は各公式窓口でご確認ください。