白いテーブルの上で、小さな子ども服を一枚ずつたたんで重ねている大人の手元。翌朝着る服を前の晩にそろえておく場面のイメージ 🏠 家庭でのかかわり
家庭でのかかわり 公開: 2026年9月29日

発達障害の子が身だしなみを気にしないとき|4つの理由と家での教え方

この記事の目次
  1. 発達障害の子が身だしなみを気にしない4つの理由
  2. 「気づいていない」子には、見るタイミングを作る
  3. 「手順が多い」子には、分けて見せて服を選び直す
  4. 「感覚的に嫌」「大事でない」ときの向き合い方
  5. 教えるときは「責めずに、できたら具体的に」
  6. 思春期や学校で指摘されたときは
  7. まとめ

寝ぐせがはねたまま、平気な顔で玄関に向かう。トレーナーが後ろ前なのに、首のところのタグにも気づかない。給食のカレーが胸に点々とついたまま、その服で夕方まで過ごしている——。何度言っても直らなくて、「うちの子だけ、どうしてこんなに気にしないんだろう」と、寝顔を見ながらため息をついている方に向けて書きます。

先にお伝えします。身だしなみを気にしないように見える背景は、1つではありません。そもそも気づいていない、手順が多くてこなせない、感覚的に嫌、本人にとって大事なことになっていない。この4つのどれかで、家でやることが変わります。この記事では、4つの見分け方と、それぞれに合う教え方、学校で指摘されたときの動き方を順に見ていきます。

発達障害の子が身だしなみを気にしない4つの理由

身だしなみの「だらしなさ」は、しつけや本人のやる気の問題として片づけられがちです。けれど、発達障害は発達障害者支援法で脳の働き方の違いとして定義されていて、育て方で生まれたものではありません。同じ「気にしない」でも、中身が違えば教え方も違ってきます。

理由よく見られる様子家で先に試すこと
気づいていない鏡を見ずに出かける、汚れや寝ぐせを指摘されて初めて知る鏡を見るタイミングを決め、確認カードを置く
手順が多くてこなせない途中で止まる、ボタンがずれる、シャツを入れ忘れる手順を写真で見せる、着やすい服に替える
感覚的に嫌髪をとかすのを嫌がる、決まった服しか着ない嫌な刺激そのものを減らす
本人にとって大事でない「別にいい」「誰も見てない」と言う本人が困る場面とつなげて伝える

1つだけでなく、2つ3つが重なっていることもよくあります。まずは一番よく見る場面を1つ選んで、どの列に近いかを考えてみてください。

「気づいていない」子には、見るタイミングを作る

大人は無意識に鏡を見たり、服の汚れに目を留めたりしています。でも、注意が興味のあることに向きやすい子は、自分の見た目に目が行く場面そのものが少ないのです。国立障害者リハビリテーションセンターの研究所は、発達障害のある人の感覚の問題として、刺激を強く感じすぎる「過敏」だけでなく、刺激を感じにくい「鈍麻」もあると説明しています。濡れた袖や汚れた服の感触に気づきにくい子がいるのは、そのためかもしれません。

気づかない子に「ちゃんと見て」と言っても、何を見ればいいかが分かりません。見る場所と、見る項目を決めてしまいます。

  • 見る場所を1か所に決める: 洗面所の鏡か、玄関の姿見。家を出る直前に必ず通る場所がおすすめです
  • 子ども本人が使う確認カードを貼る: 「かみ」「まえとうしろ」「シャツ」「よごれ」の4つくらいに絞り、イラストか写真をつけます
  • 確かめる順番を上から下にそろえる: 頭→顔→服の前→ズボン→くつ、と毎回同じ順で見ると覚えやすくなります

この確認カードは、子どもが自分の身だしなみを確かめるための道具です。最初の1〜2週間は大人が隣に立ち、一緒に指でたどってから出かけるようにすると定着しやすくなります。

「手順が多い」子には、分けて見せて服を選び直す

着替えや身支度は、ひとつひとつ分解すると驚くほど工程が多い作業です。シャツを着る、ボタンを留める、裾をズボンに入れる、襟を整える。途中で何をしていたか分からなくなる子や、指先の細かい動きが苦手な子にとっては、どこかで抜けが出るのが自然です。

発達障害教育推進センターは、忘れっぽさや、指示どおりに最後までやり遂げにくいといった行動面のつまずきについて、特性に合わせた支援の方法を紹介しています。家庭で取り入れやすいのは、次の3つです。

木のテーブルに黄色いTシャツを広げ、両手でしわを伸ばしている手元。服の前と後ろ、表と裏を目で確かめる場面のイメージ

1つめは、手順を写真にすることです。実際に家にある服を着た状態を、段階ごとにスマホで撮って並べます。文字のリストより、自分の服の写真のほうが伝わりやすい子が多いです。朝の支度全体の組み立て方は朝の支度が進まないときの前夜からの仕組みづくりにまとめています。

2つめは、前後や裏表が分かる目印をつけることです。服の前側の内側に小さなワッペンや刺しゅうをつける、「えりのうしろに名前」を家のルールにする、といった方法があります。目印が1つ決まるだけで、後ろ前はぐっと減ります。

3つめは、着やすい服に替えることです。細かいボタンのシャツより、かぶるだけのトレーナー。ベルトより、ウエストがゴムのズボン。シャツを入れる必要のない丈の服を選ぶのも一つの手です。ボタンやファスナーそのものに苦戦しているなら、不器用さが関わっていることもあります。不器用な子どもの特徴と家でできる工夫も参考にしてください。

💡 ここまでの要点

気づかない子には「見る場所と項目」を決める。手順が多い子には「写真で分けて見せる」「目印をつける」「着やすい服に替える」。どちらも、本人の努力を増やすより、仕組みを変えるほうが先です。

「感覚的に嫌」「大事でない」ときの向き合い方

髪をとかすとブラシが痛い、制服の襟がチクチクする。こうした感覚の嫌さが理由のときは、教え方よりも刺激そのものを減らすことが先になります。服の素材やタグの工夫は服のタグや縫い目を嫌がるときの対処法で詳しく取り上げています。同じ服ばかり着たがる子も、着心地の安心を求めていることがあるので、清潔が保てていれば同じ服を2〜3枚そろえる方法もあります。

一方で、「誰も見てないし」「別にいい」と本人が言う場合は、他の人からどう見えるかを想像しにくいことが関わっている場合があります。このときは「みっともない」と見た目の正しさを説くより、本人が困る場面とつなげるほうが届きます。

  • 「シャツが出てると、体育の鉄棒で引っかかるよ」
  • 「髪がはねてると、帽子がかぶりにくいよ」
  • 「汚れた服は、においで友だちが気にすることがあるよ」

教えるときは「責めずに、できたら具体的に」

どの理由でも共通して大切なのは、教えるときの順番と声のかけ方です。こども家庭庁は、しつけのための体罰が法律で禁止されたことを受けて、体罰や怒鳴ることによらない子育ての考え方をまとめています。身だしなみも、きつく言えば直るものではありません。

1
大人がやって見せる鏡の前で「かみ、よし。まえとうしろ、よし」と声に出して確かめてみせます。
2
一緒にやる確認カードを指でたどりながら、子どもと同じ順番で見ていきます。
3
自分でやって、大人は見守る抜けがあっても、すぐに直さず「カードの3番目、見てみて」とヒントだけ出します。
4
できたところを具体的に伝える「シャツ、ちゃんと入ってるね」と、できた項目の名前をそのまま口にします。

「ちゃんとして」「だらしない」という言葉は、何を直せばいいかの情報を含んでいません。直してほしいときは、「えりが中に入ってるよ」のように場所を1つだけ伝えると動きやすくなります。全部を一度に直そうとせず、今週は寝ぐせだけ、来週は後ろ前、と1項目ずつ進めて構いません。

思春期や学校で指摘されたときは

高学年から中学生にかけては、身だしなみを周りから指摘される場面が増えます。からかいの種になったり、女の子の場合は体の変化にともなう身だしなみの課題が出てきたりもします。女の子特有の気づかれにくさについては女の子の発達障害が気づかれにくい理由にまとめました。

学校から指摘を受けたら、まず「いつ、どんな場面で」気になったのかを担任に聞いてください。体育のあと、給食のあとなど、崩れやすい時間帯が分かれば、学校でも鏡を見るタイミングを1回作ってもらえないか相談できます。家と同じ確認カードを筆箱に入れておく方法もあります。

🌱 今できていないことは、ずっと続くわけではありません

身だしなみは、仕組みと練習で少しずつ身につけていく技術です。今日できなくても、確認カード1枚、目印1つから始めれば、それで十分な一歩です。

まとめ

  • 身だしなみを気にしない理由は「気づいていない」「手順が多い」「感覚的に嫌」「本人にとって大事でない」の4つに分けて考える
  • 気づかない子には、鏡を見る場所と、子ども本人が使う確認カードを用意する
  • 手順が多い子には、写真の手順、前後の目印、着やすい服への切り替えが効きやすい
  • 声かけは「だらしない」より、直す場所を1つだけ伝え、できたら具体的に伝える
  • 学校で指摘されたら、場面を具体的に聞き、家と学校でやり方をそろえる

今夜はここまでで大丈夫です。明日の朝は、子どもが家を出る前に、どこが崩れているかを1か所だけ見てみてください。それが、確認カードの最初の1項目になります。

よくある質問

何歳くらいから身だしなみを自分で整えられるようになりますか?

できるようになる時期には大きな個人差があり、年齢だけで遅い・早いは決められません。大事なのは年齢より、いま「どこまで一人でできて、どこから手伝いが要るか」です。着る・直す・確かめるのうち、一人でできている部分を一つずつ広げていけば十分です。

毎朝同じ服ばかり着たがります。やめさせたほうがいいですか?

清潔が保てていれば、無理にやめさせる必要はありません。着心地が決まっている服は、本人にとって安心材料になっていることがあります。同じ服を2〜3枚そろえて洗い替えを作ると、洗濯の問題と本人の安心を両立しやすくなります。

注意すると「別にいい」と言って聞きません。どうしたらいいですか?

本人の中で身だしなみの優先順位が低いときは、正しさを説明しても響きにくいものです。「ボタンがずれてると寒いよ」「シャツが出てると体育で引っかかるよ」のように、本人が困る場面とつなげて一言だけ伝えるほうが届きやすくなります。言い合いになりそうな日は、深追いせずに翌日に回して構いません。

学校の先生から身だしなみを指摘されました。家で何をすればいいですか?

まず、どの場面で何が気になったのかを具体的に聞いてください。体育の着替えのあとなのか、給食のあとなのかで打つ手が変わります。家での取り組みを伝えたうえで、学校でも鏡を見るタイミングを一度だけ作ってもらえないか相談すると、家と学校で同じやり方をそろえやすくなります。

参考・出典

本記事は公的機関等の公開情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、医学的な診断・助言に代わるものではありません。 制度の内容はお住まいの自治体や時期によって異なる場合があります。最新の情報は各公式窓口でご確認ください。