🏠 家庭でのかかわり 発達障害の子どもへの接し方|ASD・ADHD別に家で今日からできる声かけ
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「早くして」と5回言っても、まだ靴下を片手に持ったまま。「明日は公園に行けないよ」と伝えた瞬間に泣き出して、夕飯どころではなくなる。返事を待たずに次の言葉をかぶせて、また話がこじれる——。毎日がこの調子だと、自分の接し方そのものが間違っている気がしてきます。
先にお伝えすると、発達障害の子どもへの接し方は、特別な技術より「伝わる形に変える」ことが土台です。短く具体的に言う、予定を目で見える形にして先に知らせる、返事を待つ、できた瞬間に気づいて言葉にする。この4つは、診断の有無に関係なく今日から使えます。この記事では、声かけと指示の出し方、見通しの伝え方、待ち方、気持ちが高ぶったときの関わり方を順に見ていきます。あわせて、自閉スペクトラム症(ASD)寄りと注意欠如・多動症(ADHD)寄りで工夫がどう違うか、中学生になったらどう変えるかも整理します。
発達障害の子どもへの接し方、まず押さえたい4つの土台
接し方の土台は、言葉の量を減らして、目と耳の両方から伝わる形にすることです。叱り方や褒め方の細かい言い回しより先に、次の4つを押さえておくと、どの場面にも応用できます。
| 土台 | 家での具体例 |
|---|---|
| 短く具体的に言う | 「ちゃんとして」ではなく「靴をはこう」と、動作の言葉で1つだけ伝える |
| 先に知らせる | 予定や終わりの時間を、始まる前と直前の2回伝える |
| 目で見える形にする | 一日の流れや約束を、紙やホワイトボードに書いて貼っておく |
| できた瞬間に気づく | 全部終わるのを待たず、動き出した時点で「はけたね」と言う |
この4つが効くのは、伝わらない原因の多くが「聞く気がない」ではなく「届き方のずれ」にあるからです。国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターは、ADHDの特徴として、注意を続けることの難しさや、順番を待つこと、約束を守ることの苦手さを挙げています。自閉症の特徴としては、コミュニケーションの難しさや、興味や行動のかたよりを挙げています。どちらも、言葉だけで長く伝えると取りこぼしが起きやすい特性です。
声かけと指示の出し方は「近づく・短く・1つずつ」
指示は、離れた場所から言うのをやめて、そばに行ってから短く1つだけ伝えます。これだけで、同じことを何度も言う回数が目に見えて減ります。
厚生労働省の事業でつくられたペアレント・トレーニング実践ガイドブックは、指示の出し方の基本を次のように整理しています。子どものそばに行って注意をひき、予告をしてから、落ち着いた冷静な声で具体的に指示を出し、できたらほめる、という流れです。
家で使うときは、次の3点を意識してみてください。
- 名前を呼んで、こちらを見てから話す: 返事や視線が返ってくる前に言った指示は、ほぼ届いていません
- 1回に1つだけ言う: 「片付けて、手を洗って、座って」は3つの指示です。1つ終わったら次を言います
- してほしいことを言う: 「走らないで」より「歩こう」のほうが、何をすればいいかがすぐ分かります
否定形を肯定形に変える言い換えの具体例や、注意が必要な場面での伝え方は、発達障害の子への叱り方と褒め方にまとめています。
見通しの伝え方は「前もって・目で見える形で」
予定は、変わる直前ではなく前日までに伝え、当日にもう一度、目で見える形で確かめられるようにします。先が見えない状態は、それだけで子どもを不安にさせ、泣く・固まる・何度も聞くといった姿につながりやすいからです。
国立特別支援教育総合研究所の発達障害教育推進センターは、予定の変更に対応するための支援として、次のような工夫を紹介しています。変更は前日までに伝えて当日の朝にもう一度説明すること、変更の前と後を本人が目で確認できるようにすること、全体に向けた説明でも名前を呼んで自分のことだと気づけるようにすること、の3つです。学校向けの内容ですが、家庭の予定にもそのまま当てはまります。

家では、たとえば次のように使えます。
- 朝のうちに「おやつ→宿題→公園→おふろ」と書いて冷蔵庫に貼る
- 予定が変わったら、前の紙を線で消して新しい予定を書き足し、変わったところを指さして見せる
- 終わりの時間は「長い針が6になったら」「タイマーが鳴ったら」と、目で確かめられる形にする
遊びを終えられない、次の行動に移れないといった場面が多いなら、切り替えができない子への声かけの工夫も合わせて使えます。
待ち方のコツは「急かさず待つ」と「待つ合図を決める」
待つことには2つの意味があります。親が子どもの返事や動き出しを待つことと、子どもが順番や「あとで」を待てるように支えることです。
親の側の待ち方で大切なのは、指示を言ったあとに数秒、口を閉じることです。考えている途中で次の言葉をかぶせると、子どもは最初の指示を処理し直すことになり、かえって動き出しが遅れます。ガイドブックは「25%ルール」という考え方も紹介しています。やるべきことの25%でもできていたら、そこをすかさずほめるというものです。全部できるのを待たずに、動き出した瞬間を拾ってください。
子どもの側の待ち方には、決まりと合図を先に用意しておくのが効きます。発達障害教育推進センターは、順番を待ったり話を最後まで聞いたりするための支援として、決まりを図などで分かりやすく示すことや、話し出す前に手を挙げるといった合図を取り入れることを挙げています。家なら、話したいことがあるときは肩を軽くたたく、と決めておくだけでも、割り込みが減りやすくなります。
ASD寄りとADHD寄りで、工夫はどう違う?
土台は同じですが、つまずきやすい場面と、効きやすい工夫の重みが少し違います。下の比較は、わが子を当てはめるためではなく、「どちらに近いかな」と考える材料として使ってください。両方の特徴を持つ子や、診断のないグレーゾーンの子も多いので、合いそうな工夫を両方から選んで構いません。
🧩 ASD(自閉スペクトラム症)寄りの子
- つまずきやすいのは、急な予定変更やいつもと違う手順
- 効きやすいのは、前日までの予告と、紙に書いた予定
- 「ちゃんと」「あとで」より、何をいつまでにと具体的に言う
- 好きなことを手がかりに、やりとりを広げる
⚡ ADHD(注意欠如・多動症)寄りの子
- つまずきやすいのは、長い指示や待ち時間
- 効きやすいのは、1つずつの指示と、短く区切った課題
- 終わりの時間をタイマーなどで目に見える形にする
- 動き出した時点ですぐ認め、達成感を細かく積む
ASD寄りの子は、言葉の意味を字の通りに受け取りやすいことがあります。「ちょっと待って」の「ちょっと」がどれくらいか分からず、待てなくなる場面です。ADHD寄りの子は、指示の内容は分かっていても、別のことに注意が移って途中で止まることがあります。同じ「言うことを聞かない」でも、中で起きていることが違うので、打ち手も変わります。
ASD寄りの子とのやりとりは、本人の好きなことを入り口にすると広がりやすくなります。ADHD寄りの子には、宿題や片付けを数分で終わる単位に分けて、区切りごとに「1つ終わったね」と声をかけると、最後まで続けやすくなります。
気持ちが高ぶったときの関わり方
泣く・怒る・固まるといった高ぶりの最中は、説明や説得をいったん止めて、落ち着くのを待つ時間にします。高ぶっているときは、言葉の中身より声の大きさや勢いだけが伝わりやすいからです。

振り返りは、その日のうちにできなくても大丈夫です。翌朝の落ち着いた時間のほうが、話が入ることもあります。泣く・暴れるが長く続く日の具体的な対応は、発達障害の子の癇癪への対応で詳しく扱っています。
💡 毎回うまくできなくて大丈夫です
接し方の土台は、短く言う、先に知らせる、見える形にする、できた瞬間に気づく、の4つだけです。疲れている日に声を荒らげてしまっても、それまでの関わりが消えるわけではありません。次の場面で、4つのうち1つに戻れば十分です。
中学生になったら、接し方はどう変える?
中学生になったら、親が指示を出す形から、本人と相談して決める形へ少しずつ移していきます。思春期は、親に細かく言われること自体に反発しやすい時期だからです。
- 指示より質問にする: 「宿題やりなさい」ではなく「今日の宿題、何時からにする?」と、決める部分を本人に渡す
- 人前で注意しない: きょうだいや友だちの前ではなく、2人のときに短く伝える
- 見える化は本人の道具で: 紙を貼るより、スマホのリマインダーやカレンダーを本人が自分で設定できるよう手伝う
小学生のうちに使っていた「短く具体的に」「先に知らせる」は、中学生にもそのまま効きます。変えるのは、決める役を誰が持つかです。
関わり方を順を追って学びたいときは、保護者向けのプログラムも使えます。発達障害ナビポータルは、子育てに難しさを感じる保護者が参加できる支援として、ペアレント・プログラムやペアレント・トレーニングを紹介しています。実施の有無や申し込み方は自治体によって違うので、住んでいる地域の子育て相談の窓口で確かめてください。家で取り入れられる形は自宅でできるペアレント・トレーニングにまとめています。
まとめ
- 発達障害の子どもへの接し方の土台は、短く具体的に言う、先に知らせる、目で見える形にする、できた瞬間に気づく、の4つです
- 指示は、そばに行って名前を呼び、こちらを見てから1つだけ、してほしいことを言います
- 予定は前日までに伝え、当日にもう一度、紙などで確かめられるようにします
- ASD寄りの子は予告と具体的な言葉、ADHD寄りの子は1つずつの指示と短い区切りが効きやすいですが、合う工夫は両方から選んで構いません
- 気持ちが高ぶっている最中は説明を止めて待ち、落ち着いてから短く振り返ります。中学生には、決める役を少しずつ本人に渡します
今夜はここまでで大丈夫です。明日、いちばんよく言う指示を1つだけ選んで、言う前にそばに行き、名前を呼んでこちらを見てから伝えてみてください。
よくある質問
診断がついていないグレーゾーンの子にも、同じ接し方でいいですか?
同じで大丈夫です。短く具体的に伝える、予定を目で見える形にする、できたところに気づいて言葉にする、といった工夫は診断の有無に関係なく使えます。診断名より、その子がどんな場面でつまずいているかを見て、合う工夫を選んでください。
保育園や小学校の先生にも、家と同じ接し方をお願いしたほうがいいですか?
家でうまくいった伝え方があれば、具体的に共有すると役立ちます。たとえば、予定の変更は前日に伝えてほしい、指示は1つずつだと動きやすい、といった形です。全部をそろえてもらう必要はなく、効いた工夫を1つか2つ伝えるだけで十分です。
接し方の本を読んでも、うまく実践できません。
本に書かれた工夫を一度に全部やろうとすると、続かないのが普通です。毎日くり返す場面を1つだけ選び、そこで1つの工夫を2週間ほど続けてみてください。関わり方を順を追って学びたいときは、自治体などが開いているペアレント・トレーニングに参加する方法もあります。
きょうだいにも同じ接し方をしたほうがいいですか?
短く具体的な指示や、できた行動に気づいて言葉にする関わりは、きょうだいにもそのまま使えます。発達の特性に合わせた工夫が、特別扱いに見えて不公平だと感じられることもあるので、きょうだいと1対1で過ごす時間を短くても作っておくと安心です。