🏠 家庭でのかかわり 発達障害の子の癇癪への対応|小学生でも続く理由と落ち着くまでの関わり方
この記事の目次
「もう終わりだよ」と声をかけた瞬間に床へ倒れ込んで叫ぶ、出かける直前に靴を投げる、プリントを丸めて破く——。30分たっても収まらず、こちらの声はもう届いていない。夏休みも終わりに近づいて、生活のリズムが崩れたまま毎日これが続いている。先にお伝えすると、癇癪の最中に言い聞かせても、ほとんど届きません。親がやることは、癇癪の前・最中・あとでそれぞれ違います。この記事では、最中の関わり方、逆効果になりやすい対応、引き金を見つける記録の取り方、小学生になっても続く理由、そして自傷や他害があるときの安全確保と相談先を順に見ていきます。
癇癪の対応は「前・最中・あと」で変わる
同じ癇癪でも、時間帯によって親の目標はまったく別です。ここを分けるだけで、対応はかなり楽になります。
| タイミング | この時間の目標 | 親がやること |
|---|---|---|
| そのまえ | 引き金を1つ減らす | 予定を先に伝える/空腹と疲れの時間帯を避ける/終わりの合図を決めておく |
| 最中 | 安全を守って、通り過ぎるのを待つ | 危ないものをどける/言葉を減らす/手の届く距離で待つ |
| そのあと | 次に生かせる形にする | 短くねぎらう/してほしかったことを1つ伝える/1行だけ記録する |
いちばんつまずきやすいのは、最中に「そのあと」の仕事をやろうとすることです。理由を聞く、約束を思い出させる、謝らせる。どれも大事ですが、気持ちが高ぶっている最中は、言葉を受け取る余裕そのものがありません。最中にできるのは、けがをさせないことと、待つことの2つだけです。
最中の関わり方を、順番にすると次のようになります。

待つ時間は、5分で切り替わる子もいれば30分以上かかる子もいます。時計を見て数えるより、洗い物を続ける、座って水を飲むなど、親が手を動かせる作業を1つ持っておくほうが持ちこたえられます。
やってはいけない対応と、代わりにできること
親を追い込むのは、収まらないことそのものよりも、つい強い手を使ってしまったあとの後悔です。先に線を引いておきます。
⚠️ 逆効果になりやすい対応
- 泣きやむまで理由を問いただす
- 大声で言い返す・脅すように言う
- 叩く、突き飛ばす、閉じ込める
- 静かにさせるためにその場でお菓子や動画を渡す
- 人前で恥ずかしいと責める
🌱 代わりにできること
- 声をかける回数を減らし、一言だけにする
- 親が先に息を吐いて、声の高さを下げる
- 危ないものをどけて、届く距離で待つ
- 落ち着いてから、してほしいことを1つ伝える
- 人目がつらいときは、その場から静かに離れる
叩く・怒鳴るといった対応は、しつけとして認められていません。こども家庭庁は、令和元年6月の児童福祉法の改正で、親などが子どものしつけに際して体罰を加えてはならないと定められ、令和2年4月から施行されたと説明しています。あわせて、保護者が子育ての悩みを相談できる体制を整えることも施策の柱にしています。体罰を使わないことと、親が一人で耐えることは、まったく別の話です。
静かにさせるためにその場でお菓子や動画を渡す方法も、扱いに気をつけたいところです。叫べば手に入る形が続くと、次の癇癪の強さが増しやすくなります。渡すなら、落ち着いたあとに、別の理由で渡す。それだけでも意味が変わります。
癇癪の引き金を見つける「そのまえ・そのとき・そのあと」の記録
癇癪を減らす手がかりは、たいてい起きる直前の数分に隠れています。専門的な観察の考え方も、家庭でやるなら3つの欄で足ります。
| そのまえ(きっかけ) | そのとき(起きたこと) | そのあと(どうなったか) |
|---|---|---|
| 夕方、ゲームを止めるよう声をかけた | 床に倒れて20分叫んだ | 待っていたら自分で立ち上がった |
| 朝、予定が急に変わった | 玄関で座り込み、出発が30分遅れた | 予定を紙に書いた日は落ち着いていた |
| 帰宅直後にお風呂を促した | 服を投げて部屋に閉じこもった | 先におやつを出した日は起きなかった |
スマホのメモに1行書くだけで十分です。2週間ためると、引き金の顔ぶれが見えてきます。よく出てくるのは次のような場面です。
- 切り替えの場面: 遊びの終わり、テレビを消すとき、お風呂や寝る時間
- 予定が変わったとき: 行き先の変更、順番が違う、約束していたことが流れた
- 感覚のつらさ: 大きな音、まぶしさ、服のちくちく、においや味
- 体の状態: 空腹、寝不足、暑さ、疲れ
- うまく伝わらないとき: 言いたいことが言葉にならない、聞き返される
引き金が分かれば、手前で1つだけ外せます。終わりの5分前に予告する、予定を紙に書いて見せる、空腹の時間帯に用事を入れない。音が引き金になっている場合は、聴覚過敏で音を嫌がる子への対処法の工夫がそのまま使えます。
夏休みの終わりは、この引き金が重なりやすい時期です。起きる時間も食事の時間もばらつき、二学期の話題が出るたびに緊張が上がります。生活の立て直しを全部やろうとせず、起きる時間だけ、と1つに絞ってください。
💡 癇癪は、しつけの失敗のサインではありません
激しい癇癪が続くことと、親の育て方が下手なことは別の話です。気持ちの高ぶりが強く出て、切り替えに時間がかかる。その特性は、愛情のかけ方で生まれたものではありません。今日うまくいかなくても、明日また関わり直せます。
小学生になっても癇癪が続くのはなぜか
「園のうちは仕方ない」と言われてきたのに、小学生になっても収まらない。むしろ激しくなった気がする。そう感じているなら、理由の見当をつけておくと気持ちが整理できます。
癇癪は、気持ちを言葉にする力が育つ途中で起きやすいものです。その力が伸びれば減っていきますが、伸び方には差があります。発達の特性があると、感じる強さのほうが先に大きくなり、言葉が追いつかない状態が長く続くことがあります。
小学生で続く背景には、次のようなものがあります。
- 感情の高ぶりが強く、いったん上がると自分では下ろしにくい
- 見通しが立たない場面に弱く、予定変更が大きな負担になる
- 学校で気を張り続けた反動が、帰宅後の家庭で出る
- 感覚のつらさが積み重なり、余力がない状態で1日を終えている
- 言葉で説明するより先に、体の反応が出てしまう
年齢が上がると、周囲の目や体の大きさという別の負担も加わります。ただ、減っていないように見えて、1回の時間が短くなった、自分から部屋に移動できたという変化が先に出ることもあります。回数だけで判断しないでください。
自傷・他害・物を壊すときの安全確保と相談先
頭を壁に打ちつける、親をたたく、家具を倒す。ここまで来ると、関わり方の工夫だけで抱えるのは無理があります。まず安全の確保です。
- 硬いもの、割れるもの、刃物を、癇癪が起きやすい部屋から先に片づける
- 頭を打ちつける場所には、クッションやマットを置く
- きょうだいが避難できる部屋を決めておく
- 止めに入るときは、腕を押さえるのではなく、体の横から体ごと支える
発達障害ナビポータルは、自分の体をたたく、他人をたたく、物を壊す、大泣きが何時間も続くといった行動が著しく高い頻度で起こり、特別に配慮された支援が必要になっている状態を強度行動障害と説明しています。ここに近い状態なら、相談は早いほうが選べる手が多くなります。
相談先の目安は次のとおりです。
| 相談先 | こんなときに |
|---|---|
| かかりつけの小児科 | けが、眠れない、食べられないなど体の心配があるとき。紹介先も教えてもらえる |
| 発達外来・児童精神科 | 頻度と強さが増している。家庭の生活が回らない。予約は数か月待つことが多い |
| 児童発達支援・放課後等デイサービス | 家以外に落ち着ける場所をつくりたい。対応を一緒に考える人がほしい |
| 自治体の子育て・障害福祉の窓口、保健センター | 何から相談すればいいか分からないとき。制度の入り口になる |
| 発達障害者支援センター | 発達障害に特化した相談をしたいとき。都道府県や政令市に置かれている |
厚生労働省は、発達障害に関する情報提供の中心として、国立障害者リハビリテーションセンターに発達障害情報・支援センターを置いていると案内しています。どこに電話すればいいか迷うときの整理は発達障害の相談窓口はどこ?にまとめています。
学校でも癇癪が出ている場合は、担任と情報をそろえておくと動きが早くなります。話し合いのなかで通級や特別支援学級の提案が出ることもあり、その受け止め方は特別支援学級は「ずるい」と言われたときで触れています。
親が先に消耗しないために
癇癪の対応でいちばん削られるのは、親の気持ちの体力です。毎回きちんと対応しようとすると、月末には空になります。
対応の質は、その日の親の余力で決まります。今日は最低限だけと決める日をつくる、もう一人の大人と交代する、しんどい日は記録を休む。やらない日があっても、積み上げてきたものは消えません。
保護者向けのプログラムも用意されています。発達障害ナビポータルは、子育ての難しさに向き合う方法としてペアレント・プログラムやペアレント・トレーニングを紹介し、同じ悩みを持つ家族どうしのつながりが孤立感をやわらげることにも触れています。自治体や支援センターで実施していないか聞いてみてください。消耗が限界に近いときは発達障害の子育てに疲れたときにもどうぞ。
まとめ
- 癇癪の最中にできるのは、けがを防ぐことと待つことの2つです。説得は落ち着いてから
- 親のやることは、前・最中・あとで違います。前は引き金を1つ減らす、あとは1行記録する
- 叩く・怒鳴るはしつけとして認められていません。2020年4月から体罰の禁止が法律に定められています
- 引き金は「そのまえ・そのとき・そのあと」の3欄メモで見えてきます。切り替え、予定変更、感覚、空腹と疲れが定番です
- 小学生で続くのは、感じる強さに言葉が追いつかないためで、親の育て方のせいではありません
- 自傷・他害・物の破壊があるときは、安全の確保を先に。かかりつけ、発達外来、放課後等デイ、自治体の窓口に相談できます
今夜はここまでで大丈夫です。明日、余裕のあるときに、今日の癇癪について「そのまえ・そのとき・そのあと」を1行だけメモに書いてみてください。1行が数日たまるころには、手前で外せる引き金が1つ見つかります。
よくある質問
子どもの癇癪は何歳ごろまで続きますか?
気持ちを言葉にする力が育つにつれて減っていくことが多く、幼児期に山を越える子もいます。ただ、発達の特性がある場合は小学生になっても続くことがあり、年齢だけで区切れるものではありません。回数が減らなくても、1回あたりの時間が短くなった、切り替えが自分でできた、という変化が先に出ることもあります。
癇癪のときに抱きしめてもいいですか?
落ち着く子もいれば、触られることでかえって高ぶる子もいて、反応は分かれます。試すなら、正面から強く抱き込むのではなく、背中に手を置く程度から様子を見てください。嫌がって振りほどくようなら、無理に続けず、手が届く距離で待つ形に切り替えるほうが早く収まります。
外出先やお店で癇癪が起きたとき、どうすればいいですか?
その場で言い聞かせようとせず、まず人の少ない場所へ移動することを優先してください。駐車場の車の中、施設の階段脇、店の外など、静かで安全な場所であれば十分です。周囲への説明は落ち着いてからで構いません。買い物を切り上げる判断も、失敗ではなく想定内の選択肢として持っておくと動きやすくなります。
癇癪が激しいと、発達障害ということでしょうか?
癇癪そのものは幼児期に広く見られるもので、それだけで発達障害かどうかを判断することはできません。目安になるのは激しさよりも、続く期間、生活への影響、本人がどれだけ困っているかです。家庭の生活が回らない状態が続くときは、診断名がつくかどうかとは別に、支援を受ける相談を始めてよい段階です。
きょうだいが癇癪を怖がります。どうしたらいいですか?
きょうだいには、別の部屋やイヤホンなど、その場から離れられる逃げ場を先に決めておくと安心につながります。落ち着いたあとに「怖かったね、あなたのせいじゃないよ」と一言伝えるだけでも受け止め方が変わります。我慢を求める前に、逃げ場と一言をセットで用意してあげてください。