🤝 療育・支援サービス 幼稚園・保育園に受け入れを断られたら?根拠になる法律と相談先
この記事の目次
見学の帰り道に「お子さんには、うちは難しいかもしれません」と言われた。願書をもらいに行ったら「加配の先生がいないので」と先に断られた。2学期の面談で「来年度は、ほかの園も見てみたらどうですか」と切り出された——。その場ではうまく言い返せなくて、帰ってから手が震えてきた、という方へ書いています。
先に、いちばん大事なことをお伝えします。2024年4月から、私立の幼稚園や保育園を含む事業者にも、障害のある子への合理的配慮を提供することが法律上の義務になりました。 園が一度「難しい」と言ったことは、話の終わりではなく、話し合いの入口です。この記事では、その法律の足場、保育園と幼稚園で違う相談先、断られたときに動く順番と園への伝え方、そして入園後に「続けられない」と言われたときのルートまでを順番に整理します。
2024年4月から、園にも「合理的配慮」の義務があります
根拠になるのは障害者差別解消法です。内閣府は、この法律が2021年5月に改正され、2024年4月1日から施行されたことで、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務になったと案内しています。ここでいう事業者には、会社やNPOだけでなく教育機関も入ります。公立の園は行政機関等として、もともと義務の側にいます。つまり、公立も私立も、幼稚園も保育園も対象です。
法律が差別として禁じているのは2つです。ひとつは不当な差別的取扱い、もうひとつは合理的配慮を提供しないことです。
国の基本方針には、不当な差別的取扱いに当たると考えられる例が具体的に並んでいます。保護者が知っておいて役に立つのは、次の2つです。
- 障害の種類や程度、その場面での本人や周りの安全性を考えることなく、漠然とした安全上の問題を理由に施設の利用を断ること。
- 具体的な場面や状況に応じた検討をしないまま、一律に保護者や介助者の付き添いを利用の条件にすること。
「何かあったら困りますので」「お母さんが毎日ついてくださるなら」。園に悪気がなくても、この2つの言い方は、国が例として挙げている形にかなり近づきます。言われた側が黙って引き下がらなければいけない話ではありません。
💡 断られたのは、あなたの育て方のせいではありません
園が難しいと言ったのは、その園のいまの体制についての話です。子どもの値打ちの話でも、保護者の準備不足の話でもありません。法律は、その体制をどう工夫できるかを園と一緒に考える道を用意しています。
保育園と幼稚園では、断られたときの相談先が違います
同じ「園」でも、入口のしくみが違います。ここを取り違えると、相談する相手を間違えたまま時間だけが過ぎます。
認可保育所は、市町村に申し込みます。児童福祉法の第24条第1項は、保育を必要とする子どもについて、市町村は保育所において保育しなければならない、と定めています。保育の実施は市町村の仕事という組み立てです。ですから、認可保育所で受け入れが難しいと言われたときの相談先は、園だけではありません。市町村の保育の担当課にも、同じ話を持っていけます。
一方、幼稚園は保護者が園に直接申し込みます。長崎市は、1号認定(教育利用)の場合は直接、利用を希望する施設へ申し込むよう案内していて、保育利用の2号・3号認定は市へ申し込む形と分けています。私立幼稚園の入園は園と保護者の契約なので、園の判断が大きく効きます。ただし、契約だから何をしてもよいわけではありません。私立幼稚園も差別解消法の事業者です。
🏫 認可保育所・認定こども園(保育利用)
- 申込先は市町村
- 児童福祉法で市町村に保育の実施義務
- 園だけの判断で入所が決まる形ではない
- 相談先は市町村の保育の担当課
🎒 幼稚園・認定こども園(教育利用)
- 申込先は園(直接契約)
- 定員も受け入れ方針も園ごとに違う
- 私立幼稚園も差別解消法の事業者
- 相談先は市町村の幼児教育担当と都道府県の私学担当
認可外の保育施設は、市町村を通した入所のしくみの外にあります。それでも差別解消法の対象という点は変わりません。
園は何でも断れるわけではない。でも無制限でもありません
法律が求めているのは、園が無理をしてでも受け入れることではありません。合理的配慮には「過重な負担にならない範囲で」という条件がついています。ここを知らないまま強く出ると、話がこじれて子どもが通いにくくなります。
国の基本方針は、過重な負担かどうかを事案ごとに、次のような材料を考えて総合的・客観的に判断するとしています。
| 判断の材料 | 園の場面でいうと |
|---|---|
| 事務・事業への影響の程度 | その配慮をすると、園の保育や教育そのものが成り立たなくなるか |
| 実現可能性の程度 | 建物や設備の制約、人の配置や体制の制約があるか |
| 費用・負担の程度 | かかるお金や手間がどのくらいか |
| 事務・事業規模 | 園の規模がどのくらいか |
| 財政・財務状況 | 園の経営の状況がどうか |
大事なのは、ここから先です。基本方針は、過重な負担に当たると判断した場合は、丁寧にその理由を説明し、理解を得るよう努めることが望ましいと書いています。そのうえで、代替の手を選ぶことも含めて、お互いが建設的対話を通じて柔軟に検討することを求めています。
つまり、「うちでは無理です」の一言で終わらせることは、法律が想定している姿ではありません。理由を説明すること、別のやり方を一緒に探すこと。保護者が園に求めてよいのは、この2つです。
断られたときに動く順番と、園に伝える言い方
動く前に、園の事情を1つだけ知っておくと話が早くなります。園が渋る理由の多くは、子どもを嫌っていることではなく、人の手当てが年度の単位で決まってしまうことにあります。加配の職員を置く補助は翌年度分として市町村や都道府県の予算で組まれますし、決まっても人が採れない年があります。だから「いま無理」と「ずっと無理」は同じではありません。ここを分けて聞くだけで、返ってくる答えが変わります。

言い方に迷ったら、そのまま使える形を置いておきます。
- 理由を聞くとき:「どの場面がいちばん心配ですか。家でやっている工夫をお伝えできるかもしれません」
- 支援を提案するとき:「園の先生を支えるしくみとして保育所等訪問支援があると聞きました。市に聞いてみてもいいですか」
- 窓口に相談するとき:「◯月◯日に△△園で、こういう説明を受けました。どこに相談すればよいか教えてください」
窓口の話をもう少し具体的にします。内閣府は、障害を理由とする差別についての相談を、自治体や各省庁の適切な窓口につなぐための「つなぐ窓口」を設けています。電話は0120-262-701で、相談フォーム、メール、手話での電話リレーサービスからも相談できます。教育の分野も対象に入っていて、障害者手帳を持っている人に限られません。どこに相談すればいいか分からないときの、最初の1本として使えます。住んでいる自治体の障害福祉の窓口でも受け付けています。窓口の種類そのものは発達の相談窓口はどこ?にまとめました。
なお、園の中での配慮を厚くする話は、加配という枠で相談し直せることがあります。申請の手順と時期は保育園・幼稚園の加配とは?にまとめています。
入園後に「うちでは続けられない」と言われたら
言われ方はさまざまです。「集団生活は難しいようです」「一度お休みして、療育に専念されてはどうですか」「来年度の受け入れはお約束できません」。どれも、退園や転園をうながす言葉として耳に届きます。
その場で「わかりました」と返事をしなくて大丈夫です。 持ち帰って構いません。そのうえで、次の3つを順に進めます。
- 記録を残す。いつ、誰が、どの場面について、何と言ったか。スマホのメモに日付つきで書くだけで十分です
- 市町村に同じ話を伝える。認可保育所や認定こども園の保育利用は、市町村が関わって決まっている枠です。園と家庭だけで結論を出す話ではありません。幼稚園なら市町村の幼児教育の担当か都道府県の私学の担当へ
- 園の困りごとに支援を当てる。園が抱えているのは多くの場合「どう対応すればいいか分からない」という不安です。外から専門職が入る保育所等訪問支援や、市町村の巡回相談が、その不安に直接効きます
保育所等訪問支援は、専門職が子どもの通う園に出向いて、子ども本人への支援と先生への助言を行うしくみです。子どもが園を出なくてよいので、送迎の負担も増えません。使い方は並行通園とは?の後半にまとめています。
それでも折り合わないときが、差別解消の相談窓口の出番です。年度の途中でも、締め切りはありません。
願書は10月1日前後、保育園の4月入園は10〜12月
私立幼稚園の願書受付は、例年10月1日前後に始まる地域が多くあります。認可保育所の4月入園の申し込みは、10月から12月にかけて受け付ける市町村が中心です。つまり9月下旬のいまは、幼稚園を回る人にとっては直前、保育園を考える人にとっては準備の時期にあたります。運用は自治体と園によって違うので、日程は必ず住んでいる市町村と園の案内で確かめてください。
これから見学に行くなら、次の5つを聞いておくと、断られる前に園の実情が見えます。
- これまでに、支援が必要な子を受け入れた経験はありますか
- 加配の職員がついた例はありますか。つかなかった年もありますか
- 巡回相談や保育所等訪問支援を受け入れたことはありますか
- 入園前に、何日か一緒に過ごす時間をとってもらえますか
- もし難しいと判断される場合は、いつ、どんな形で教えてもらえますか
そして、すでに断られた方へ。締め切りが過ぎても、相談の道は閉じません。市町村の担当課は年度を通して開いていますし、差別解消の相談窓口に受付期間はありません。認可保育所は、4月入園の一斉受付とは別に、年度の途中の入所を毎月受け付けている市町村があります。療育の通い先の申請にも締め切りはなく、手続きの流れは通所受給者証の申請の流れにまとめています。「もう遅い」と思った日にかけた1本の電話が、次の年度の話を変えることがあります。
まとめ
- 2024年4月から、私立の幼稚園や保育園を含む事業者にも合理的配慮の提供が義務づけられました。公立も私立も対象です
- 国の基本方針は、漠然とした安全上の理由で利用を断ることや、一律に保護者の付き添いを条件にすることを、不当な差別的取扱いに当たると考えられる例として挙げています
- 認可保育所は市町村に保育の実施義務があり、相談先は園だけではありません。幼稚園は園との直接契約なので、市町村の幼児教育担当や都道府県の私学担当が相談先に加わります
- 園にも「過重な負担」という線はあります。ただし、そう判断したときは理由を説明し、代わりの手を一緒に探すことが求められています
- 断られたら、理由の確認 → 自治体の担当課 → 園に支援を届ける提案 → 差別解消の相談窓口、の順に動けます。内閣府のつなぐ窓口は0120-262-701です
- 年度の途中でも、退園をうながされたときでも、その場で返事をする必要はありません。記録を残して、市町村に同じ話を伝えるところから始められます
今夜はここまでで大丈夫です。明日、気持ちに余裕があるときに、断られたときの言葉を思い出せる範囲でメモに書き出してみてください。日付と、言われた場面がひとつ残っていれば、どの窓口に行っても話は始められます。
よくある質問
発達障害があると伝えたら入園を断られました。これは差別にあたりますか?
その場の事情によるので、一律には決まりません。ただし国の基本方針は、障害の種類や程度、その場面での安全性を考えずに、漠然とした安全上の問題を理由に施設の利用を断ることを、不当な差別的取扱いに当たると考えられる例として挙げています。断りの理由が「前例がない」「何かあったら困る」だけで、子どもの様子を見たり話し合ったりした形跡がないなら、市町村の担当課や障害者差別の相談窓口に相談してよい場面です。
園から「お母さんが付き添うなら受け入れます」と言われました。従うしかないですか?
すぐに受け入れる前に、相談してみてください。国の基本方針は、具体的な場面や状況を検討しないまま、一律に保護者や介助者の同伴を利用の条件にすることを、不当な差別的取扱いに当たると考えられる例として挙げています。場面を限った短期間の付き添いと、期限のない全日の付き添いはまったく別の話です。「どの場面で、いつまで必要ですか」と確認し、園の負担を軽くする別の手を一緒に探す形に持っていけると、話が動きやすくなります。
つなぐ窓口に相談すると、園に伝わってしまいますか?
本人の同意なしに取次先へ伝わることはありません。内閣府は、相談者の氏名や住んでいる地域、事案の概要などを聞き取り、本人の同意の上で取次先の自治体や国に提供すると説明しています。個人が特定される情報が外部に公開・共有されることはないとも書かれています。まず話を聞いてもらうだけ、という使い方もできます。
年度の途中で退園をうながされています。すぐに返事をしないといけませんか?
その場で決めなくて大丈夫です。まず、いつ・誰が・どの場面について・何と言ったかを日付つきでメモに残してください。認可保育所や認定こども園の保育利用は市町村が関わって決まっている枠なので、園と家庭だけで結論を出す話ではありません。担当課に「こう言われたのですが」と伝えるところから始められます。
認可外の保育施設でも同じように相談できますか?
障害者差別解消法の対象という点では同じです。法律の対象になる事業者は、営利か非営利か、法人か個人かを問わず、同じサービスを繰り返し行っているところ全般で、教育機関も含まれます。ただし、市町村を通した入所のしくみや加配の補助が及ばない地域があるため、園が自前で体制を組めるかどうかで決まる部分は大きくなります。