🏫 園・学校生活 発達障害の子の忘れ物が多い理由と対策|小学生の家庭の仕組みと学校への配慮
この記事の目次
体操服が入っていない、水筒は教室に置いたまま、連絡帳はランドセルの底で折れ曲がっている——。今週も何かが足りないまま帰ってきて、金曜の夜には先週配られたプリントが出てくる。先にお伝えすると、忘れ物が続くのは、やる気や心がけの問題ではありません。一時的に覚えておく力、注意の切り替え、時間の見通し。このどこかに負担がかかると、本人がどれだけ気をつけようとしても抜け落ちます。この記事では、忘れ物が起きる背景と、叱る代わりにやることを整理します。そのうえで、今日から動かせる家庭の仕組み、プリントが出てこないときの工夫、置き勉を含めて学校に頼める配慮と連絡帳の例文を見ていきます。
発達障害の子の忘れ物が多いのはなぜか
「忘れ物」は結果として目に見えるもので、つまずいている場所はその手前にあります。家で見えている様子から背景の見当をつけると、打つ手が決まります。
| 家や学校で見えている様子 | 背景にありやすいこと | 先に効きやすい手 |
|---|---|---|
| 玄関を出る直前に言われた物を持たずに出る | 一時的に覚えておく力に負担がかかっている | 覚えさせるのをやめ、目に入る場所に置く |
| 支度の途中で別のことを始める | 注意が別のものへ切り替わりやすい | 支度する場所から画面とおもちゃを外す |
| 「あとでやる」がそのまま夜になる | 時間の見通しが立ちにくい | 支度の時刻を夕食後などに固定する |
| ランドセルの底にプリントがたまる | 出す動作が毎日の流れに入っていない | 帰宅後に中身を全部出す1動作を決める |
| 家では覚えているのに学校で出せない | 場面が変わると思い出す手がかりが消える | 手がかりを持ち物側に貼りつける |
| 週明けや行事の翌日に増える | いつもと違う日は手順が崩れる | 前の晩に持ち物を声に出して1回読む |
発達障害のある子は、聞いた内容を短いあいだ頭に置いておく力に負担がかかりやすい場合があります。国立特別支援教育総合研究所の発達障害教育推進センターも、注意欠如多動症(ADHD)の特性として、不注意による忘れっぽさや、物をなくしやすいことを挙げています。
特性の現れ方には個人差があり、同じ診断名でもつまずく場所は違います。2026年時点で確かなのは、記憶力を鍛える方向より、覚えていなくても持ち物がそろう形に変える方向のほうが早いということです。
叱っても減らない理由と、代わりにやること
忘れ物のたびに叱っても、次の日の記憶が増えるわけではありません。増えるのは「また怒られる」という緊張だけで、その緊張はかえって注意をそらします。やることの向きを、次のように入れ替えます。
- 本人の頭に覚えさせる → 環境と道具に覚えさせる
- 声で伝える → 目に見える形にして持ち物のそばに置く
- 出発の直前に確認する → 前の晩に済ませ、朝は見るだけにする
- できなかったことを指摘する → できた回数が目に見えるようにする
言葉での指示は、玄関に着くまでのあいだに別の情報に押し出されます。紙・写真・置き場所といった、その場に残るものに置き換えるのが基本です。
💡 忘れ物の数は、育て方の通信簿ではありません
持ち物がそろわないことと、家庭のしつけが行き届いていないことは別の話です。覚えておく力の使い方に負担がかかっているだけで、本人がなまけているわけでも、親の関わりが足りないわけでもありません。仕組みで補えば、同じ子でも忘れ物は減ります。
今日から動かせる家庭の仕組み5つ
作るのは、本人の意識ではなく通り道です。全部そろえる必要はありません。今夜1つだけ選んでください。
| 仕組み | やること | うまくいかないときの調整 |
|---|---|---|
| 持ち物の定位置を決める | ランドセル・水筒・体操服の置き場所を1か所にまとめる | 片づけ先が2か所以上あると戻らなくなる |
| 前の晩に「明日のセット」を作る | 夕食後に、明日いる物を全部その場所に集めてから詰める | 朝にずらさない。朝は残った1つを足すだけに |
| 写真つきの持ち物表を貼る | 教科書や体操服を実物の写真で並べ、支度する場所の壁に貼る | 字だけの表で止まるなら写真に替える |
| 玄関に「最後の関門」を作る | 玄関のドアに、忘れやすい3つだけを大きく書いた紙を貼る | 増やすと見なくなる。3つを月ごとに入れ替える |
| ランドセルを毎日空にする | 帰宅したら中身を全部かごに出し、空にしてから翌日の物を入れる | 続かないうちは、親が一緒に出す |
夜と朝の通り道を、順番にすると次のようになります。
この仕組みは、新学期の前に一度作っておくと定着しやすい一方で、学期の途中から始めても問題なく動きます。始業式が過ぎていても、二学期の半ばでも、始めた日から使えます。むしろ実際に忘れて困った直後のほうが、本人が受け入れやすい面があります。
道具を買いそろえる必要もありません。かごも表も、家にある物と紙で足ります。市販の収納用品を使うなら、置き場所が1か所にまとまるタイプかどうかだけ見てください。
✅ 今夜、1つだけ確かめること
- ランドセルの置き場所は1か所に決まっているか
- 明日の支度を、朝ではなく前の晩にできる時間帯はあるか
- 持ち物の手がかりは、声ではなく目に見える形になっているか
- 玄関に貼る3つを、本人と一緒に選べそうか
- 帰宅後にランドセルを空にする係を、当面どちらがやるか決めたか

プリントや連絡帳が出てこないときは、通り道を1本にする
持ち物とは別に家庭を悩ませるのが紙です。プリントは配られてから親の手に届くまでに、受け取る・しまう・持ち帰る・出すという4つの工程を通ります。工程が多いほど、どこかで止まります。
いちばん効くのは、紙の通り道を1本に減らすことです。具体的には次の形にします。
- ランドセルに入れるクリアファイルは1枚だけにする。もらった紙はすべてそこへ入れる
- ファイルの色は目立つ1色に決め、学年が上がっても変えない
- 家では、中身を出す場所を玄関か食卓の1か所に固定する
- 親が中身を見る時刻を決める。夕食後などと決まっていれば見落としが減る
- 提出物は、記入したその場でファイルに戻す。翌朝に回さない
自分で続かないうちは、担任にお願いする方法もあります。帰りの会でファイルを出す時間を一言かけてもらう、連絡帳を書いたあとに見てもらう、といった内容です。
学校に頼める配慮と、連絡帳の例文
家庭の仕組みだけで足りないときは、持ち物の量や確認の仕方そのものを学校と相談できます。学校には、障害のある子の困りごとに合わせて対応する合理的配慮という仕組みがあります。内閣府は、令和6年(2024年)4月1日に改正法が施行され、事業者による合理的配慮の提供が法的な義務になったと案内しています。
持ち物については、置き勉を後押しする根拠もあります。文部科学省は平成30年(2018年)9月に、児童生徒の携行品の重さや量への配慮を求める事務連絡を各教育委員会などへ出しました。あわせて示された工夫例には、家庭学習で使う予定のない教材を机の中に置いて帰ることを認める、という内容が入っています。多くの学習用具を使う日は数日に分けて持ってくるよう指導する、置いて帰ってよい物のリストを年度当初に配る、という例もあります。置き勉は、わがままではなく国が工夫例として示している対応です。
夏休み明けについても具体例があります。文部科学省は、休み明けの始業日は持ち物が多くなることから、休み中の登校日に宿題や学習用具の一部を持ってくるようにしている学校の例を挙げています。始業式に大荷物を持たせるのが難しいときは、この例をそのまま相談の材料にできます。
実際に頼める内容は、次のようなものです。
| お願いする内容 | 具体例 |
|---|---|
| 持ち帰る物を減らす | 家で使わない教科書や道具を机やロッカーに置いて帰ることを認めてもらう |
| 持ち帰りを分散させる | 学期末の大きな荷物を1日1つずつに分けてもらう |
| 下校前の声かけ | 帰りの会で、本人に持ち物とファイルの確認を一声かけてもらう |
| 連絡帳の記入確認 | 書けているかをその場で見てもらう。難しい日は時間割の写真で代える |
| 掲示で見えるようにする | 翌日の持ち物を黒板の決まった位置に書き、消さずに残してもらう |
| 忘れた日の扱い | その場で全体の前で指摘せず、あとから保護者に伝えてもらう |
伝えるときは、事実 → 困っている場面 → こちらからの提案 → 期間を区切る、の順にすると話が進みます。連絡帳ならこのくらいの分量で足ります。
置き勉を相談したいとき
いつもありがとうございます。ランドセルが重く、帰り道で荷物を置いてきてしまう日が続いています。家庭学習で使わない教科書や道具について、机やロッカーに置いて帰ることを認めていただけないでしょうか。持ち帰る必要がある日は、前日に教えていただければ家で確認します。
下校前の確認をお願いしたいとき
持ち物の忘れが多く、本人も気にしています。家では前の晩に準備する形に変えましたが、学校から持ち帰る物が抜けてしまいます。帰りの会のときに、持ち物とファイルの確認を一声かけていただけないでしょうか。二学期のあいだ試させてください。
一度に全部を通そうとしなくて構いません。まず置き勉だけ、と範囲を区切ると学校も受けやすくなります。配慮の伝え方の組み立ては給食の配慮の伝え方がそのまま使えますし、決まったことを書面に残す形は個別の教育支援計画・支援シートの書き方にまとめています。
「自分でやらせないと自立しない」と言われたら
準備を手伝っていると、周囲から甘やかしだと言われることがあります。ここだけ先に整理しておきます。
自立とは、全部を一人でやることではなく、自分に合ったやり方を知っていることです。大人も、予定はカレンダーに入れ、買う物はメモに書き、鍵は決まった場所に置きます。誰も記憶だけで生活していません。子どもに用意しているのは、その大人と同じ道具です。
手伝う量は少しずつ渡していけます。最初の2週間は親が一緒にやり、次はチェック表を本人が読む係になり、その次は最後の確認だけ親が見る。減らす順番を決めておけば、同じ形がずっと続くわけではありません。
宿題の取りかかりでも同じつまずきが出ているなら宿題をやらない・できないときの対処法を、二学期の入り口そのものが重いなら夏休み明けの行き渋りへの備えもあわせてどうぞ。
まとめ
- 忘れ物が続くのは、覚えておく力の負担・注意の切り替え・見通しの立ちにくさが背景にあることが多く、やる気の問題ではありません
- 叱っても記憶は増えません。本人の頭に覚えさせる形から、環境と道具に覚えさせる形へ切り替えます
- 家庭でできるのは、定位置を決める・前の晩にセットを作る・写真つきの表を貼る・玄関に最後の関門を置く・ランドセルを毎日空にするの5つです
- プリントはクリアファイル1枚に集約し、家で出す場所と親が見る時刻を決めると止まりにくくなります
- 学校には、置き勉、持ち帰りの分散、下校前の声かけ、連絡帳の記入確認を相談できます。文部科学省は2018年に携行品への配慮を求める事務連絡を出しています
- 仕組みは新学期前でも学期の途中でも作れます。手伝う量は、あとから少しずつ減らしていけば大丈夫です
今夜はここまでで大丈夫です。明日、余裕のあるときに、玄関のドアに忘れやすい物を3つだけ書いた紙を貼ってみてください。増やすのは、その3つが定着してからで構いません。
よくある質問
忘れ物のたびに親が学校へ届けるのは、やめたほうがいいですか?
毎回届けると親の負担が大きく、続きません。届けるかどうかを、その場の気分ではなく先に決めておくのがおすすめです。給食セットや体育のある日だけ届ける、それ以外は届けない、と線を引いておくと迷いません。届けなかった日に本人が困った場面は、責める材料ではなく、仕組みを見直す材料として使ってください。
何度言っても直らないのは、反抗しているからでしょうか?
言葉で伝えた指示は、その場では届いていても、玄関に着くまでのあいだに別の情報に押し出されてしまうことがあります。反抗ではなく、覚えておく工程が続かないだけの場合が多いです。同じ内容でも、口で言うのをやめて紙やカードにして持ち物のそばに置くと、反応が変わることがあります。
忘れ物が多いだけで、発達障害を疑ったほうがいいですか?
忘れ物の多さだけで判断できるものではありません。目安になるのは回数よりも、生活にどれくらい支障が出ているか、本人がどれだけ困っているかです。学校生活が回らない状態が続くときは、診断名がつくかどうかとは別に、担任や自治体の相談窓口に状況を伝えてよい段階です。
きょうだいには忘れ物がありません。育て方の違いでしょうか?
同じ家庭で同じように育てても、覚えておく力や注意の向き方には差が出ます。忘れ物の多さは、しつけの結果を映したものではありません。きょうだいと比べる言い方は本人の自信を削りやすいので、比較は口に出さず、それぞれに合った準備の形を用意してあげてください。
高学年になれば自然に減りますか?
持ち物の管理は年齢とともに上手になっていく面がありますが、増える持ち物や複雑になる時間割に追いつかず、高学年で目立ってくることもあります。減るのを待つより、今のうちに本人が使いこなせる形を一緒に見つけておくほうが、中学以降に持ち越せます。