🏠 家庭でのかかわり 発達障害の子がゲームをやめられない|依存の目安と家のルール・相談先
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「あと1回だけ」と言ってから、もう1時間たっている。電源を切った瞬間にコントローラーを投げて泣き叫ぶ。夜中にトイレに起きたら、布団の中でスマホの画面が光っていた——。検索窓に「ゲーム依存」と打ち込んだ手が、少し震えていたかもしれません。ゲームをやめられないことだけで、依存症と決まるわけではありません。WHOがゲーム障害(ゲーム行動症)の目安にしているのは、遊ぶ時間の長さよりも、やめどきを決められないことや生活への大きな支障です。診断をするのは医師で、家庭でできるのは目安を知って、ルールを一緒に作り、必要なら早めに相談することです。この記事では、やめられない理由、見分けの目安、家でのルールの作り方、相談先を順に見ていきます。
発達障害の子がゲームをやめられないのはなぜ?
やめられないのは、意志が弱いからでも、しつけが足りないからでもありません。発達の特性とゲームの作りが、ちょうどかみ合いやすいところがあります。
- 切り替えそのものが重い——夢中になっている活動から注意を引きはがす作業に、ほかの子より大きな力がいる
- 終わりが見えない——オンラインのゲームや動画は、次のステージや次のおすすめが続き、自然な区切りが来ない
- 時間の感覚がつかみにくい——「あと10分」が、体で感じる長さと結びついていない
- ほかの場所でうまくいかない——学校や友だち関係で疲れている分、ゲームの中が安心できる居場所になっている
国内で最初にネット・ゲーム依存の専門診療を始めた久里浜医療センターは、つながっていない昔のゲームはクリアすれば終わりがあったのに対し、オンラインのゲームは終わりのない世界への没頭を容易にしたと説明しています。同センターは、ADHD(注意欠如・多動症)の傾向とゲームへののめり込みに強い関連があるという研究報告も紹介しています。ただし、これは「発達障害の子は依存症になる」という意味ではありません。のめり込みやすい条件がそろいやすいので、先に手を打っておく価値がある、という受け止め方で十分です。
切り替え全般の工夫は発達障害の子が切り替えできない理由と対応にまとめています。
「ゲーム依存かも」の見分け方の目安
目安になるのは、時間の長さではなく「やめどき・優先順位・困ったことが起きても続けるか・生活への支障」の4点です。WHOは、ゲーム障害を次の特徴をもつゲームの遊び方のパターンだと説明しています。
| WHOが挙げる特徴 | 家庭で見えやすい姿の例 |
|---|---|
| やめどきを自分で決められない | 約束の時間を過ぎても止められない日がほとんどになる |
| ほかの活動よりゲームが優先になる | 好きだった外遊びや習いごとに興味を示さなくなる |
| 困ったことが起きても続ける・増える | 寝不足で朝起きられなくても、夜のゲームが減らない |
| 生活に大きな支障が出ている | 登校できない日が続く、家族との関係が大きく崩れる |
WHOは、診断にはこうした状態が生活に大きな支障を出していること、そして通常は12か月ほど続いていることが必要だとしています。ゲームで遊ぶ人のうち、ゲーム障害にあたるのはごく一部だとも書いています。
久里浜医療センターは、ICD-11(WHOの病気の分類)のゲーム行動症にもとづいた短い質問票「ゲームズテスト」を公開しています。過去12か月をふり返り、やめるべきときに止められなかったか、昼夜逆転があったか、睡眠や気分に問題が出ても続けたか、平日に何時間遊んでいるかなどを答える形式です。点数は受診や相談を考えるきっかけとして使うもので、それだけで診断が決まるものではありません。気になるときは、結果をメモして相談の場に持っていく使い方がおすすめです。
💡 長く遊んでいる=依存症、ではありません
見るべきなのは時間より、やめどき・優先順位・生活への支障です。ゲームで遊ぶ子のほとんどは、ゲーム障害にはあたりません。ここまで調べている時点で、あなたはもう十分に子どものことを見ています。
家でできるゲーム・スマホのルールの作り方
ルールは親が決めて渡すより、子どもと一緒に作るほうが守られやすくなります。久里浜医療センターは、親が一方的に「1日30分」と決めると現実的でないルールになり、子どもが守る気になれないと説明しています。子どもの言い分も入ったルールなら、自分のこととして意識しやすくなります。
すでに遊ぶ時間がかなり長くなっている場合、同センターは、まず生活習慣やリズムを整えるルールから始める視点をすすめています。ゲームの時間を削る話より先に、睡眠と食事の時間を守る話をするほうが、もめにくく効果も見えやすい順番です。夜にゲームやスマホが手放せず眠れない様子があれば、発達障害の子どもが寝ないのはなぜ?もあわせて読んでみてください。

特性に合わせた「終わり方」の工夫
発達の特性がある子には、ルールの中身と同じくらい、終わり方の設計が大事です。
- 時間より区切りで終える——対戦ゲームは途中でやめると負けになることがあります。「この試合が終わったら」「この動画が終わったら」と区切りで決めます
- 残り時間を目に見える形にする——タイマーや時計を視界に置き、終わりの少し前に一度だけ声をかけます
- 止める操作は本人にやってもらう——親が電源を切る形にしないことで、取り上げられた感覚を減らせます
- 終わったら見えない場所にしまう——リビングの決まった箱や棚に戻し、寝室には持ち込まないようにします
- 機械の力を借りる——ゲーム機やスマホにある使用時間の制限やロックの機能を、子どもと話し合ったうえで使います
全部を一度に始める必要はありません。いちばんもめている時間帯を1つ選んで、そこだけ変えてみてください。

やめさせようとしてもめたとき・長い休みのとき
電源を切ったとたんに大泣きする、物を投げる。そうなったら、その場でルールを言い聞かせるのはやめて、安全を守ることを優先してください。泣いている最中の説明はほとんど届きません。落ち着いてから「さっきはつらかったね。終わり方を変えてみようか」と話すほうが、次のルール作りにつながります。泣き出したあとの関わり方は発達障害の子の癇癪への対応にまとめています。
久里浜医療センターは、機器の安易な取り上げや一方的なルール決めが、会話の減少や暴力につながると説明しています。かわりにすすめているのは、ふだんから友好的に声をかけて対話を積み重ね、達成できる小さな目標を一緒に決めて、できたことを認めていく関わり方です。同センターは、回復は一進一退で年単位の時間がかかることが多い、とも伝えています。うまくいかない日があっても、後戻りではなく途中経過です。
夏休みや冬休みは、学校の時間割という外からの枠がなくなるため、遊ぶ時間が延びやすい時期です。休みに入る前に、起きる時刻と寝る時刻だけでも決めておくと、崩れ方が小さくなります。
ゲームのことで相談できる場所
生活への支障が続いているなら、家庭だけで抱えずに相談してください。相談するのに、診断や「依存症かどうか」の判断はいりません。
✅ 相談を考えたいサイン
- 約束の時間を過ぎても止められない日がほとんどになっている
- 好きだったほかの活動より、ゲームがいつも優先になっている
- 寝不足や登校できない日が続いても、ゲームが減らない
- 止めようとすると、暴言や暴力が出る
| 相談先 | どんなときに | 知っておきたいこと |
|---|---|---|
| かかりつけの小児科・発達外来の主治医 | まず誰かに話したいとき | 発達の特性とあわせて相談できる |
| 精神保健福祉センター | 家族だけで相談したいとき | 都道府県・政令指定都市ごとにある公的な相談機関 |
| 保健所 | 近くで相談したいとき | 保健師などの専門職が電話や面談で応じる |
| ネット・ゲーム依存の専門医療機関 | 生活への支障が大きいとき | 依存症対策全国センターのサイトで地域の医療機関を探せる |
厚生労働省は、精神保健福祉センターを各都道府県と政令指定都市に1か所ずつ(東京都は3か所)ある相談機関として紹介しています。「こころの健康センター」という名前の地域もあります。思春期の相談や依存症の家族相談も扱っていて、まずは電話で問い合わせる形が一般的です。窓口の名前や受付の方法は自治体によって異なります。
久里浜医療センターのインターネット依存治療部門は、2026年10月時点で完全予約制です。初診の予約受付日が月に1回設けられていて、家族だけの相談も受け付けています(家族のみの相談は自由診療)。遠方の場合は、まず地元の窓口や主治医に相談し、必要に応じて紹介を受ける流れが現実的です。発達の困りごと全体の相談先は発達障害の相談窓口にまとめています。
相談に行くときは、いつ・何で・どれくらい遊んでいるか、止めたときにどうなるか、睡眠や登校に出ている影響を、メモにして持っていくと話が早く進みます。
まとめ
- ゲームをやめられないことだけで、依存症とは決まりません。診断は医師が行います
- 目安は時間の長さより、やめどき・優先順位・困ったことが起きても続けるか・生活への支障の4点です
- ルールは子どもと一緒に作り、時間より先に睡眠と食事の時間を守ることから始めます
- 終わり方は区切りで決め、止める操作は本人に、終わったら見えない場所にしまいます
- 生活への支障が続くなら、主治医や精神保健福祉センターに家族だけでも相談できます
今夜はここまでで大丈夫です。明日、子どもの機嫌がいい時間に「ゲームの終わり方、どうしたら楽?」と一つだけ聞いてみてください。ルール作りは、その答えから始まります。
よくある質問
子どものゲームは1日何時間までなら大丈夫ですか?
時間だけで安全かどうかは決まりません。WHOがゲーム障害の特徴として挙げているのは、やめどきを自分で決められない、ほかの活動よりゲームが優先になる、困ったことが起きても続ける、の3つと、それによる生活への大きな支障です。時間の上限は、子どもと話し合って家庭ごとに決め、守れているかより生活が回っているかで見直してください。
ゲーム機やスマホを取り上げてもいいですか?
急に取り上げると、親子の会話が途切れたり、激しい反発につながったりしやすい方法です。久里浜医療センターも、安易な取り上げや一方的なルール決めは関係の悪化や暴力につながると説明しています。取り上げる前に、置き場所や終わり方を子どもと一緒に決めるところから始めてください。
ゲーム依存が心配なとき、病院は何科に行けばいいですか?
まずは、かかりつけの小児科や、すでに通っている発達外来・児童精神科の主治医に相談するのが近道です。ネットやゲームの問題を専門に診る医療機関もあり、依存症対策全国センターのサイトで地域の相談窓口や医療機関を探せます。受診の前に、精神保健福祉センターや保健所で家族だけで相談することもできます。
ゲーム依存で入院することはありますか?
専門の医療機関には入院治療を選択肢として持っているところもありますが、入院が必要かどうかは医師が状態を見て判断します。多くは外来での診察やカウンセリング、家族への支援から始まります。入院という言葉が頭に浮かぶほど心配なときこそ、一人で抱えずに早めに相談してください。
ゲームをやめさせれば、発達障害の特性も落ち着きますか?
ゲームを減らすことと、発達の特性そのものは別の話です。睡眠が整って朝が楽になるなど、生活の面で変わることはありますが、特性がなくなるわけではありません。ゲームのことと、困りごとの支援は分けて考え、両方を主治医や支援者に相談していくのが安心です。