🌸 保護者のこころとくらし 子どもの発達障害を受け入れられない親へ|揺れる気持ちのまま支援を始める方法
この記事の目次
診察室を出たあと、言われた診断名だけが頭の中で何度も繰り返される。学校から「読み書きに苦手さがあるかもしれません」と連絡があった日から、子どもの寝顔を見るたびに胸がざわつく。検索窓に「発達障害 受け入れられない」と打っては消して、また打っている——。まず結論からお伝えします。子どもの発達障害を受け入れられないのは、親として自然な反応です。そして、気持ちが追いつかないままでも、子どものための一歩は小さく始められます。この記事では、受け入れられない気持ちの中身、自分を責めてしまうときの考え方、受け入れる前にできること、話せる場所を順にまとめます。
子どもの発達障害を受け入れられないのは、自然な反応です
受け入れられない自分を「親失格」だと思う必要はありません。専門機関も、その気持ちが出てくるのは当然のことだと説明しています。
国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターは、診断を伝える専門職に向けたページで、親の気持ちについてこう書いています。我が子に障害という診断名がつくことは、その可能性を示されただけでも大きな衝撃で、心に重い負担がかかる。悲しみや怒り、できれば認めたくないという気持ちが出るのは当然で、簡単には消えるものではない、という内容です。
つまり、受け入れられないという反応は、専門家の側でも想定されているものです。あなたの心が弱いからでも、子どもへの愛情が足りないからでもありません。同じページでは、親が一歩を踏み出すまでには紆余曲折がある、とも書かれています。まっすぐ進めなくて当たり前なのです。
💡 今夜いちばん持ち帰ってほしいこと
受け入れられないのは、あなたが弱いからでも冷たいからでもありません。専門機関の資料でも当然の気持ちとして扱われています。気持ちが整うのを待たなくても、子どものための一歩は始められます。
「受け入れられない自分」を責めてしまうのはなぜ?
受け入れられない気持ちの中には、いくつかの別々の感情が混ざっています。ひとかたまりのまま抱えるより、中身を分けてみると少し軽くなります。
| 心の中で起きていること | その奥にあるもの | こう考えてみる |
|---|---|---|
| 「何かの間違いでは」と思う | 子どもの将来が急に見えなくなった怖さ | 診断名は子どもの全部ではなく、困りごとの説明の一部 |
| 子どもにイライラしてしまう | 思い描いていた子育てとのずれ | ずれを感じるのは、それだけ真剣に考えてきた証拠 |
| 周りの子と比べてしまう | 自分だけ取り残されたような孤独 | 比べる相手を「半年前のこの子」に変える |
| 「私のせいかも」と思う | 何かをしていれば防げたはず、という後悔 | 育て方が原因ではない(次の見出しで説明します) |
| 認めたら負けな気がする | 子どもを守りたい気持ち | 受け入れることは、あきらめることとは違う |
特に最後の気持ちは見落とされがちです。「まだ認めたくない」は、裏返せば子どもにレッテルを貼らせたくないという、守る気持ちです。その気持ちごと、子どもを大事に思っている証拠だと受け止めてください。
支援級や通級をすすめられて「恥ずかしい」と感じてしまう気持ちがつらいときは、支援級が恥ずかしいと感じてしまう親へで、その感情に絞って整理しています。
気持ちは行ったり来たりしていい
一度受け入れたと思っても、また気持ちが戻ってくることがあります。それは後戻りではなく、多くの親がたどる道です。
文部科学省の保護者向け資料には、保護者の気持ちの移り変わりを段階で説明した考え方が載っています。何か気になるけれど認めたくない時期、診断を受けてショックを受ける時期、遅れを取り返そうと必死になる時期と続きます。そのあとに、子どもの状態を正面から受け入れられる時期が来る、という流れです。ただ、これは一つの見方です。全員が同じ順番で進むわけではなく、一つの段階に長くいる人もいれば、何度も行き来する人もいます。
気持ちが揺れ戻りやすいのは、たとえば次のようなタイミングです。
- 入学や進級、クラス替えで環境が変わるとき
- 発達検査や面談で、新しい結果や言葉を受け取ったとき
- 運動会や参観日で、同じ学年の子との差を目の当たりにしたとき
- 親戚の集まりなど、説明を求められる場に出るとき
こうした場面で落ち込んでも、それまでの歩みが消えるわけではありません。「また来たな」と気づけるだけで、揺れに飲み込まれにくくなります。
「育て方のせい?」「遺伝?」と自分を責めてしまうとき
いちばん苦しいのが、原因を自分に探してしまう夜かもしれません。ここははっきりお伝えします。発達障害は、親の愛情不足やしつけのせいで起こるものではありません。
文部科学省の資料は、落ち着きのなさなどから、保護者が育て方の問題として責められる場合があると書いています。そのうえで、診断を受けたとき、育て方の問題ではなかったとはっきりして、多くの保護者が一瞬ほっとすると説明しています。発達障害情報・支援センターも、子どもの発達について心配がある場合、多くの親が「自分の子育てに問題があったのでは」と自分を責めると書いています。そして、子どもの特徴を正しく伝えることは、「親の育て方の問題」という見方を正すことにつながる、という立場です。
遺伝が気になって、夜中に調べ続けてしまうこともあると思います。ただ、原因はまだ完全には解明されていません。仮に何か分かったとしても、明日からの声かけや支援の中身は変わりません。どうしても気になるときは、ネットの断片的な情報で自分を追い込むより、主治医に一度そのまま聞いてみるほうが、ずっと落ち着いて受け止められます。

頭の中で同じ考えがぐるぐる回るときは、紙に書き出すのも一つの方法です。「認めたくない」「怖い」「悔しい」と単語で書くだけでもかまいません。書いた紙は誰にも見せなくていいし、捨ててもいいものです。
受け入れることと、支援を始めることは切り離せる
この記事でいちばん伝えたいのはここです。気持ちの整理が終わるのを待たなくても、子どものための行動は先に始めてかまいません。
「ちゃんと受け入れてから動かなきゃ」と思うと、気持ちが整わない自分を責めて、何も進まなくなりがちです。気持ちと行動は、別々のペースで進めていいものです。
🌙 気持ちのこと
- 時間がかかってかまわない
- 行ったり来たりしていい
- 誰かに急かされるものではない
☀️ 行動のこと
- 小さく、今日から始められる
- 受け入れていなくても進められる
- あとから変えたり、やめたりできる
行動といっても、大きなことは要りません。たとえばこんな順番で、一つずつ進めれば十分です。
学習障害(LD)の指摘を受けた場合も同じです。読み書きや計算の苦手さは、診断名を受け止めきれていなくても、学校との相談や家での工夫から手をつけられます。
医師や園・学校に言われた言葉が刺さって抜けないとき
診断や指摘を受けた場面の言葉が、何週間も頭から離れないことがあります。それは、あなたが打たれ弱いからではありません。
発達障害情報・支援センターは、伝える側に対して、親の気持ちに配慮しながら正確な評価を伝え、次のステップまで示すよう求めています。配慮のないまま伝えられると、親は理屈でも気持ちでも受け止めきれなくなる、とも書いています。つまり、言葉で傷ついたのは、受け取る側だけの問題ではないということです。
次に話を聞く機会があるときは、こんな頼み方ができます。
- 「メモを取りたいので、ゆっくり話していただけますか」
- 「その言葉は、家ではどういう場面のことを指していますか」
- 「次に何をすればいいか、一つだけ教えてください」
- 「家族にも説明したいので、要点を書面でいただけますか」
どうしても相手との相性が合わないと感じる場合は、別の医療機関で意見を聞く選択肢もあります。ここで迷うこと自体も、自然なことです。
気持ちを話せる場所はどこ?
受け入れられない気持ちは、家族にほど話しにくいものです。家の外に話せる場所を一つ持っておくと、気持ちの揺れに一人で耐えなくてすみます。
| 話せる場所 | どんなことを話せるか | 探し方 |
|---|---|---|
| 発達障害者支援センター | 子どものことに加え、家族自身の悩みも相談できる | 都道府県・政令市ごとに置かれている。全国の一覧が公開されている |
| 保健センター(保健師) | 子育て全般と、親の心身の疲れ | 市区町村の保健センターに電話する |
| 親の会 | 同じ立場の保護者との情報交換や交流 | 市区町村の窓口や支援センターで紹介してもらえることがある |
| ペアレント・メンター | 先輩保護者に、同じ親の立場で話を聞いてもらえる | 地域によって活動が違うので、市区町村の窓口や支援センターに聞く |
発達障害者支援センターは地域によって事業内容が違うため、国立障害者リハビリテーションセンターは、まず住んでいる地域を担当するセンターに問い合わせるよう案内しています。どこに電話すればいいか迷う場合は、発達の相談窓口はどこ?で入口を確かめてください。
発達障害ナビポータルは、同じ悩みを持つ保護者の経験談がヒントになったり、孤立した気持ちが和らいだりする場合があるとして、親の会やペアレント・メンターを紹介しています。探し方は親の会とペアレント・メンターにまとめています。
夫婦の間で受け止め方がずれていて、それがつらさを大きくしている場合は、発達障害を夫が受け入れてくれないときもあわせて読んでみてください。
まとめ
- 子どもの発達障害を受け入れられないのは自然な反応で、専門機関の資料でも当然の気持ちとして扱われている
- 受け入れられない気持ちの奥には、怖さ、後悔、子どもを守りたい気持ちが混ざっている
- 気持ちは行ったり来たりするもの。入学や検査の結果などで揺れ戻っても、それまでの歩みは消えない
- 発達障害は親の育て方や愛情不足が原因ではない。遺伝が気になるときは、主治医に直接聞くほうが落ち着ける
- 気持ちの整理と支援の行動は切り離せる。困りごとのメモ1つから、受け入れる前でも始められる
今夜はここまでで大丈夫です。明日やることは1つだけ、子どもが困っている場面をスマホのメモに1行だけ書いておくこと。相談の電話は、その1行ができたあとで十分に間に合います。
よくある質問
子どもの発達障害を受け入れられないまま、療育や支援を始めてもいいのでしょうか?
始めて大丈夫です。気持ちの整理と、子どものための行動は別々に進められます。相談の予約や見学は「受け入れた人だけがするもの」ではありません。気持ちが追いついていないことは、相談の場でそのまま話してかまいません。
受け入れたと思ったのに、また落ち込みます。後戻りしているのでしょうか?
後戻りではありません。入学や学年替わり、検査の結果、同じ年の子との差を感じた場面などで、気持ちが揺れ戻るのはよくあることです。専門機関の資料でも、親が一歩を踏み出すまでには紆余曲折があるものとして扱われています。
発達障害は親の育て方や遺伝のせいですか?
発達障害は親の愛情不足やしつけが原因で起こるものではありません。原因はまだ完全には解明されていません。遺伝について気になるときは、ネットで調べ続けるより、主治医に直接聞くほうが落ち着いて受け止めやすくなります。
自分の気持ちだけを相談できる場所はありますか?
発達障害者支援センターや保健センターでは、子どものことだけでなく親自身のつらさも相談できます。同じ立場の先輩保護者が話を聞くペアレント・メンターや、地域の親の会もあります。活動のしかたは地域によって違うので、市区町村の窓口で聞いてみてください。