🏠 家庭でのかかわり 発達障害の子のトイトレが進まないとき|理由の切り分けとやめどき、秋冬の始め方
この記事の目次
パンツをはかせようとした瞬間に泣かれる。トイレの前まで来て、そこから一歩も動かない。園では座れたと聞いたのに、家では一度も便座にお尻がつかない。夏が終わり、園から「そろそろオムツを外していきましょうか」と言われて、胸がざわついている方もいると思います。
先に結論をお伝えします。トイトレが進まないときに最初にやることは、練習量を増やすことではなく、便秘の有無を確かめることと、子どもがどの段階でつまずいているかを切り分けることです。そして、うまくいかない時期はいったん止めて構いません。この記事では、つまずきの見分け方、止める判断、今日から試せる工夫、秋冬に始めるコツ、就学が近い子の準備までを順に整理します。
トイトレが進まない5つの理由を切り分ける
「進まない」とひとくくりにせず、子どもがどこで止まっているかを見ると、次の一手が変わります。多くは次の5つのどれか、あるいは複数が重なっています。
| 子どもの様子 | 背景として考えられること | まず試すこと |
|---|---|---|
| オムツが一日中濡れている・間隔が短い | 膀胱にためる力がまだ育っていない(身体の準備) | 2時間ほど間隔があくのを待つ。誘う回数を減らす |
| 便座に座ると泣く・足をばたつかせる | 冷たさや不安定な姿勢がつらい(感覚の特性) | 足台で足裏をつける。便座カバーで冷たさを消す |
| 遊びを中断できない・誘うと怒る | 見通しと切り替えの難しさ | タイマーや絵カードで「あと3分」を予告する |
| トイレの前で固まる・入りたがらない | 場所や環境への不安(音・広さ・におい) | 扉を開けたまま、入るだけで終わる練習にする |
| 出そうな感じを伝えられない | 言葉での要求の難しさ | カードや身ぶりなど、言葉以外の伝える手段を用意する |
| うんちだけ出せない・いきんで泣く | 便秘や排便時の痛み | 家庭の工夫より先に小児科で相談する |
トイレは、換気扇の音、自動で流れる水の音、反響、消臭剤のにおいと、刺激が集まりやすい場所です。自閉スペクトラム症(ASD)のある人が感じる感覚の困りごとについて、発達障害ナビポータルは、聴覚に関する困りごとが最も多く、内容は一人ひとり大きく違うと紹介しています。音が苦手な子への具体策は聴覚過敏で音を怖がる子への対処法で、遊びからの切り替えが難しい子への声かけは切り替えができない子への対応でまとめています。
⚠️ ここに注意
座らないのは、わざとでもサボりでもありません。叱る、他の子と比べる、できるまでトイレから出さないといった進め方は、トイレそのものを怖い場所として記憶させてしまい、結果的に期間を長くします。
便秘が隠れていないかを先に確かめる
トイトレが止まっている子で、意外と多いのが便秘です。硬い便で一度でも痛い思いをすると、子どもは出すこと自体を我慢します。我慢すれば便はさらに硬くなり、次はもっと痛い。この輪の中にいる間は、どんな誘い方をしても座ってくれません。
日本小児栄養消化器肝臓学会と日本小児消化管機能研究会は、子どもの慢性的な便秘についての診療ガイドラインを作り、保護者向けの資料もあわせて公開しています。便秘は「そのうち治るもの」ではなく、治療の対象です。次のような様子があるときは、家庭の工夫を続けるより先に小児科を受診してください。
- 排便のときに泣くほど痛がる、便に血がつく
- 便が出るのが週に2回以下、または数日おきに大量に出る
- 少量の便が下着に何度もついている(出口で固まった便のわきから漏れている場合があります)
- できていたのに急に後戻りした、オムツにも出さなくなった
- おしっこの回数が極端に少ない、または急に増えた
- おしっこのときに痛がる、発熱を繰り返す
受診のときは、直近1週間の排便の日と便のかたさをメモしていくと話が早く進みます。
いったん止めるのは後退ではない
トイトレは、頑張るほどこじれることがある数少ない育児課題です。毎日の声かけが子どもへのプレッシャーになり、拒否が強まり、その拒否に大人が消耗する。この状態で続けても、身につくのは「トイレは嫌なことが起きる場所」という学習だけです。
次のサインが出ていたら、いったん止める時期だと考えてください。
- トイレという言葉を聞いただけで泣く、逃げる、耳をふさぐ
- オムツにも出さなくなり、便や尿を我慢するようになった
- 2〜3か月続けて、座れる回数がまったく増えていない
- 大人が毎日いらだち、その日一日を成功か失敗かでしか振り返れなくなっている
止め方にはコツがあります。黙ってやめるのではなく、今日からしばらくはオムツでいこうね、と子どもにもはっきり伝えることです。そのうえで、家庭からトイレの話題を一度消します。数週間から2か月ほど空け、体調や生活が落ち着いた時期に、座るだけの練習から再開します。
💡 やめても大丈夫です
中断は後退ではありません。いま止めるのは、次に再開したときに子どもが嫌がらずに座れる状態を残しておくためです。終わりに向かうための休憩だと考えてください。
今日から試せる小さな工夫
再開するとき、あるいはこれから始めるときは、いきなり「トイレで出す」を目標にしないことが大切です。今できている段階の半歩先だけを目指します。
誘い方の言葉もひと工夫できます。「トイレ行く?」は、いいえと答えられる質問なので断られやすくなります。トイレに座ってからブロックにしようね、と順番で伝えるほうが通りやすい子が多いです。終わりの合図は、10まで数える、同じ歌を1曲歌うなど毎回同じにします。終わりが見えると、座っていられる時間が伸びます。
道具の面では、次の3つを見直すと変化が出やすい部分です。
- 足台:足がぶらつくと踏ん張れず、姿勢の不安から身体に力が入ります。足裏がつく高さの台を置くだけで、座っていられる時間が変わります
- 便座:便座の冷たさや補助便座の硬さが苦手な子がいます。やわらかいカバーや素材違いのものを試します
- 音:換気扇を先に止める、流すのは子どもがトイレを出てからにする。音の予告をしてから流すだけでも違います
記録は、成功だけを書いて失敗は書きません。シールを貼るなら、出た日ではなく「座れた日」に貼ります。子どもが自分で決められることをほめる形にすると、記録が追い詰める道具になりません。
夏を逃しても大丈夫。秋冬から始める工夫
トイトレは薄着で洗濯が乾く時期がやりやすいのは確かですが、秋冬に始めて進む子はたくさんいます。夏にできなかったことを気にする必要はありません。寒い季節に不利になるのは、洗濯・寒さ・服の3点だけなので、そこだけ先に手を打ちます。

- 洗濯:替えの下着とズボンを、いつもの倍の枚数そろえてから始めます。乾かない前提で、乾燥機やコインランドリーを使う曜日を先に決めておくと、洗濯物の山を見てあせる場面が減ります
- 寒さ:便座が冷たいと、座った瞬間に嫌な記憶がつきます。便座カバーを付ける、小さな暖房で先に温めておく、といった対策ができます
- 厚着:ボタンやベルトのあるズボンは、間に合わない原因になります。ウエストがゴムだけのもの、丈が短めのトレーナーにすると、自分で下ろせる子が増えます
- 暗さ:夕方以降は、トイレと廊下の電気を先につけておきます
冬は水分をとる量が減って便が硬くなりやすい季節でもあります。始める前に、便の状態が落ち着いているかを確かめておくと安心です。
園・学校と足並みをそろえる
園ではできるのに家ではできない、あるいはその逆は、とてもよくあることです。場所も便座も誘う言葉も前後の流れも違うので、子どもにとっては別の課題になっているからです。どちらが正しいかを競うのではなく、情報を交換して手順を近づけます。
保育所保育指針の解説では、排泄の自立に向けた援助は一人ひとりの発育や心の動きに応じて進めるものとされ、一律の時期で区切る考え方は取られていません。園の先生も、その前提で見てくれています。
連絡帳では、次のように具体的に書くと動いてもらいやすくなります。
- 「家では夕方の1回だけ座れています。園ではどの時間帯に誘っていただいていますか。同じ時間に合わせてみたいです」
- 「今月は家庭でのトイレの練習をお休みします。園でも誘わずに、様子を見ていただけると助かります」
- 「便座に座るとき、足がつく台があると落ち着きます。園でも足台をお願いできますでしょうか」
伝えたいのは、家庭の頑張り具合ではなく、うまくいっている条件です。時間帯・声のかけ方・道具の3点にしぼって共有すると、園と家で同じやり方に近づきます。
就学が近い子・すでに小学生の子と、相談先
年長になると、就学までにという言葉が急に重くのしかかります。ただ、小学校は入学時点でオムツが外れていることを条件にしている場所ではありません。大切なのは、現状を早めに学校に伝えて、必要な配慮を決めておくことです。
年長の秋から冬にかけて行われる就学時健診や就学相談は、それを伝える機会になります。流れは就学時健診の内容と当日の流れで確認できます。学校に伝えておきたいのは、主に次の4点です。
- 現在の状態(オムツか、日中はパンツで過ごせるか、失敗の頻度)
- 着替えの置き場所と、汚れ物を入れる袋の扱い
- 休み時間にどのように声をかけてほしいか
- 失敗したときにどこで着替えるか(人目につきにくい場所を決めておく)
すでに小学生で失敗が続いている場合も、家庭だけで抱えなくて大丈夫です。担任と養護教諭に相談し、使えるトイレと着替えの場所を決めておくと、本人の負担がかなり軽くなります。学年が上がるほど本人の恥ずかしさは強くなるので、早めに共有しておくほうが穏やかに済みます。
相談先は次の3つを覚えておけば十分です。
- かかりつけの小児科:便秘、排尿の回数の異常、就学年齢を過ぎても続く昼間の失敗、夜尿。まずここが窓口です
- 児童発達支援・放課後等デイサービス:作業療法士がいる事業所なら、姿勢や感覚面からの具体策を相談できます
- 地域の発達相談窓口・保健センター:どこに相談すればいいか分からないときの入口です。国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターも、全国の相談窓口を地域から探せるようにしています
窓口の探し方や電話のかけ方は発達の相談窓口の選び方にまとめています。
まとめ
- トイトレが進まないときは、練習量を増やす前に、便秘の有無と、どの段階でつまずいているかを切り分ける
- 排便時に泣くほど痛がる、血が混じる、急に後戻りした、おしっこの回数が極端に変わったといった様子があれば、小児科に相談する
- トイレという言葉で泣く、我慢するようになった、大人が消耗している。このときは止めてよく、中断は後退ではない
- 秋冬は、替えの下着を多めに用意する・便座を温める・ゴムのズボンにする、の3点を先に整えれば始められる
- 園や学校には、頑張り具合ではなく、うまくいっている時間帯と声のかけ方と道具を具体的に伝える
今夜はここまでで大丈夫です。明日、余裕のある時間に、ここ1週間の排便の日をカレンダーで振り返ってみてください。それだけで、次にやることが練習なのか受診なのかが見えてきます。
よくある質問
4歳になってもオムツが取れません。遅すぎますか?
排尿の自立には定型発達の子でも大きな幅があります。日本小児泌尿器科学会は、昼間のおもらしがなくなる時期を3歳では半数ほど、4歳では9割ほどと紹介していますが、これは裏返せば4歳で1割の子がまだ途中だということです。発達に特性のある子ではさらに幅が広がります。年齢だけで遅れと決めず、便秘がないか、どの段階でつまずいているかを見てください。
園ではトイレでできるのに、家ではまったくできません。なぜですか?
場所・便座の高さ・音・誘われる言葉・前後の流れが家と園ではすべて違うためです。特定の場所と手順に結びついた形で覚えている段階では、環境が変われば同じようにはできません。園でうまくいっている誘い方や時間帯を連絡帳で聞き、家でも同じ言葉と順番をまねするところから始めると、差が縮まりやすくなります。
おしっこはできるのに、うんちだけトイレでできません。
よくある順番で、多くは便秘や過去の痛い経験が関係します。硬い便で一度痛い思いをすると、出すこと自体を我慢するようになり、便がさらに硬くなる悪循環に入ります。いきんで泣く、数日出ない、少量が何度も漏れるといった様子があれば、家庭の工夫より先に小児科で便の状態をみてもらってください。
思い切ってパンツにして、漏れる経験をさせたほうが早いと聞きました。
濡れた感覚が不快だと気づいて自分から知らせるようになる子もいますが、感覚の感じ方に特性がある子では、濡れても気づかない、あるいは強い不快で混乱してしまうことがあります。失敗を重ねさせて自覚を促す方法は、叱責や後片づけのやりとりが増えるぶん、トイレへの拒否につながることもあります。まずは座れる回数を増やす方向で進めるほうが安全です。
夜のオムツはいつ外せますか?
夜のコントロールは昼間より遅く育ちます。日本小児泌尿器科学会は、夜のおもらしがなくなる時期を3歳で2割弱、5歳でも9割弱と紹介しており、昼間より数年遅れて完成する子が珍しくありません。小学校入学後も続く場合は夜尿症として相談できるので、かかりつけの小児科に一度伝えてみてください。