📋 制度とお金 障害児のおむつ代は助成される?紙おむつ給付の条件と医療費控除の現実
この記事の目次
ドラッグストアで、いつものビッグサイズの袋をまたカゴに入れる。同じ年の子のお母さんが「もうパンツになったよ」と話しているのを聞いて、そっと話題を変える。月末に家計簿を見て、おむつ代の欄だけが毎月同じように重い——。障害のある子のおむつ代には、市区町村の「日常生活用具」として紙おむつが給付される仕組みがあります。ただし多くの自治体で対象は重い障害のある子に限られ、医療費控除も「寝たきりで治療中」が前提です。この記事では、どんな子が対象になるのかを3つの市の実例で比べ、医療費控除の条件、そして対象外だったときに窓口で何を聞けばいいかまで順番に整理します。
障害児のおむつ代の助成とは?「日常生活用具」として紙おむつが出る仕組み
障害のある子のおむつ代の助成は、ほとんどの場合「日常生活用具給付等事業」という制度の中にあります。これは、障害のある人の暮らしに必要な道具を、市区町村が費用を出して渡したり、購入費を補助したりする仕組みです。
厚生労働省は、この事業の実施主体を市町村とし、対象を日常生活用具を必要とする障害者・障害児・難病患者等と示しています。紙おむつは、ストーマ装具などと同じ「排泄管理支援用具」という区分に入ります。
ここで知っておきたいのは、誰が対象になるか、いくらまで出るか、自己負担がいくらかは、国ではなく市区町村がそれぞれ決めているということです。厚生労働省も、利用者の負担は市町村の判断によるとしています。隣の市では出たのに自分の市では出ない、ということが普通に起こる制度です。
申請の流れはどこでもおおむね同じです。市区町村に申請し、給付が決まってから用具を受け取ります。先に買ったおむつ代を、あとからまとめて払い戻してもらう形ではない点に気をつけてください。
どんな子が対象?3つの市の条件を比べてみる
結論から言うと、知的障害で紙おむつの対象になるのは「重度」の手帳を持ち、排せつの意思表示やコントロールが難しい子、という線引きが多いです。実際に3つの市の公式ページで確認した条件を並べます。
| 比べる点 | 横浜市 | 神戸市 | 箕面市(大阪府) |
|---|---|---|---|
| 知的障害での対象 | 知的障害の程度が重度で、排泄コントロールが困難と医師の意見書で確認できる人 | 重度の知的障害者で、排尿・排便の意思表示が困難、かつ下のA・B両方にあてはまる人 | 記載なし(重度の身体障害者が対象) |
| 身体障害での対象 | 脳原性運動機能・下肢・体幹機能障害2級以上など | 下肢・体幹機能障害で、3歳未満に発現した脳の病変による排せつの意思表示困難など | 身体障害者手帳1級・2級で、排せつに常時介護が必要な人 |
| 年齢 | 年齢要件あり(窓口で確認) | 3歳以上 | 3歳以上 |
| 上限額 | 知的重度の区分は6か月33,000円(月あたり5,500円) | 月額12,000円 | 月額4,400円 |
| 自己負担・所得 | 原則1割。世帯の市民税によって上限あり、所得割46万円以上の世帯は対象外 | 基準額の1割。所得割46万円以上の世帯は対象外 | 市町村民税非課税世帯に限る |
| 医師の意見書 | 知的障害の区分では必須 | 必要な場合に区役所から様式を渡す | 記載なし |
神戸市の条件にあるA・Bは、「自力でトイレに行って便座に座ることができない」「介助による定時排泄ができない」の2つです。つまり、大人が時間を決めてトイレに連れて行けば出せる子は、神戸市の基準では対象から外れます。
箕面市の紙おむつ給付は、市が独自に行っている事業です。身体障害者手帳1・2級が条件なので、知的障害や発達障害だけでは対象になりません。同じ「紙おむつの給付」でも、市によってここまで中身が違います。
2026年10月時点で各市のページを確認した内容です。金額や条件は改正されることがあるので、申請の前には必ず住んでいる市区町村で最新の条件を確かめてください。
発達障害でおむつが外れない子は対象になる?
ここは正直にお伝えします。自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害があっても、知的障害が重度でなければ、紙おむつの給付の対象になることはあまり多くありません。
上の3つの市を見ても、知的障害で対象になるのは「重度」の区分だけでした。療育手帳でいえばA判定(自治体によって1度・2度など呼び方は違います)にあたる層です。手帳がBの子や、手帳を持っていない子は、多くの自治体で基準に届きません。
もうひとつの壁が、排せつの状態の見られ方です。トイレに誘えば出る日がある、昼は布パンツで過ごせる、夜だけおむつ、という状態だと、「意思表示が困難」「定時排泄ができない」という条件には当てはまりにくくなります。
それでも、おむつが外れないのは育て方やしつけのせいではありません。感覚の受け取り方やことばの発達、体の準備など、子ども自身の側の理由が重なっていることが多いからです。トイレトレーニングの進め方に悩んでいるときは、トイトレが進まない発達障害の子の進め方も参考にしてください。
💡 ここまでの要点
紙おむつの給付は、市区町村が「日常生活用具」として行う制度です。知的障害で対象になるのは重度の手帳があり、排せつの意思表示やコントロールが難しい子に限る自治体が多く、条件・上限額・自己負担は住んでいる市区町村で変わります。
おむつ代は医療費控除の対象になる?国税庁の条件
ネットで「おむつ代は医療費控除になる」という情報を見かけた方もいるかもしれません。これは本当ですが、条件がかなり限られています。
国税庁は、病気やけがでおおむね6か月以上寝たきりで、医師の治療を受けている人のおむつ代を、治療に直接必要な費用として医療費控除の対象にしています。そのうえで、医師が発行する「おむつ使用証明書」で、治療のために必要な費用だと明らかにされていることを条件にしています。
| 確認すること | 国税庁が示している内容 |
|---|---|
| 本人の状態 | 病気やけがで、おおむね6か月以上寝たきり |
| 治療 | 医師の治療を受けている |
| 必要な書類 | 治療をしている医療機関が作る「おむつ使用証明書」 |
| 申告のしかた | 確定申告で医療費控除の明細書を出し、証明書を添付または提示する |
| 証明書の保管 | 明細書の欄外に証明日・証明の名称・医療機関名を書けば添付を省ける。その場合は領収書と一緒に5年間保存 |
ここで大事なのは「寝たきり」と「治療」の2つがそろっていることです。発達障害でトイレトレーニングが進まず、おむつを使っているという状態は、この条件には当てはまりにくいと考えてください。歩いたり走ったりできる子のおむつ代は、多くの場合、医療費控除の対象外です。
一方で、重い身体の障害や病気があって寝たきりに近い状態で、医師の治療を続けている子なら、対象になる可能性があります。迷うときは、領収書を集め始める前に、主治医に「おむつ使用証明書を書いてもらえる状態か」を聞いてみるのが近道です。最終的な判断は税務署になるので、心配なら税務署の電話相談で確かめてください。
対象外だったときに使えるお金と、窓口で聞くこと
給付も控除も対象外だったとしても、おむつ代を支える方法がまったくないわけではありません。実際に使える道は3つあります。
ひとつめは、手当の使い道です。特別児童扶養手当や障害児福祉手当は、おむつ代のような日々の出費にあてても構わないお金です。まだ申請していない場合は、特別児童扶養手当がもらえる基準や障害児福祉手当と特別児童扶養手当の違いで、対象になりそうかを先に確かめてください。
ふたつめは、自治体が独自に行っている助成です。箕面市のように、国の制度とは別に市が紙おむつ代を出している例があります。名前は「紙おむつ給付」「おむつ代助成」など自治体ごとにばらばらで、ホームページに載っていないこともあります。
みっつめは、窓口で状態を正確に伝えて判断してもらうことです。身体の障害や病気が重なっている子は、知的障害とは別の区分で対象になる場合があります。自分で「うちは無理」と決めつけず、一度聞いてみる価値はあります。

窓口では、次の質問をそのまま読み上げれば大丈夫です。電話でも聞けます。
✅ 障害福祉の窓口で聞くことリスト
- 日常生活用具の紙おむつは、うちの子の手帳の区分や年齢で対象になりますか
- 対象になる場合、医師の意見書は必要ですか。様式はどこでもらえますか
- 月の上限額と、自己負担がいくらになるかを教えてください
- 国の制度とは別に、市独自のおむつ代の助成はありますか
- どの事業者から買えばいいですか。申請前に買った分は対象になりますか
聞くときは、子どもの年齢、持っている手帳の種類と区分、今のおむつの使い方(昼も夜も、夜だけなど)を手元にメモしておくと話が早く進みます。お金の制度をまとめて見直したいときは、発達障害の子が使えるお金の制度一覧も役に立ちます。
💡 対象外でも、聞いたことは無駄になりません
今回は対象外でも、手帳の区分が変わったときや年齢が上がったときに、条件に当てはまることがあります。一度窓口で話しておけば、次に何がそろえば対象になるのかが分かります。おむつ代がつらいと感じるのは、それだけ毎日のお世話を続けてきた証拠です。
まとめ
- 障害児の紙おむつ代の助成は、市区町村の「日常生活用具給付等事業」で行われることが多く、条件・上限額・自己負担は自治体ごとに違う
- 横浜市・神戸市では、知的障害で対象になるのは重度の場合で、排せつの意思表示やコントロールが難しいことが条件になっている(2026年10月時点)
- 医療費控除は、おおむね6か月以上寝たきりで医師の治療を受けている人が対象で、医師の「おむつ使用証明書」が必要。トイレトレーニングの遅れによるおむつ代は対象になりにくい
- 対象外でも、手当の使い道、自治体独自の助成、別の障害区分での給付という道が残っている
- おむつが外れないのは育て方のせいではない。迷ったら窓口に聞くのがいちばん早い
今夜はここまでで大丈夫です。明日、少し時間が取れたら、上の「窓口で聞くことリスト」をスマホのメモに写して、市区町村の障害福祉の窓口に電話を1本かけてみてください。
よくある質問
療育手帳B(中度・軽度)でも紙おむつの給付は受けられますか?
今回確認した横浜市と神戸市では、知的障害で紙おむつの対象になるのは「重度」の場合でした。中度・軽度の手帳で対象になる自治体は多くありません。ただし要件は市区町村ごとに決められているので、住んでいる自治体の障害福祉の窓口で一度確認してください。
手帳がまだない場合、おむつの給付は申請できますか?
日常生活用具は、多くの自治体で障害者手帳を持っていることが前提になっています。身体障害の手帳で対象になる道もあるため、知的障害の手帳がない場合でも、子どもの状態を窓口で伝えて、使える区分がないかを聞いてみてください。
大きいサイズのおむつ代は、医療費控除の領収書として集めておけばいいですか?
おむつ代を医療費控除に入れるには、医師が発行する「おむつ使用証明書」が必要です。国税庁は、病気やけがでおおむね6か月以上寝たきりで、医師の治療を受けている人のおむつ代を対象としています。領収書だけでは足りないので、対象になりそうかを先に主治医に相談してください。
給付が決まったら、おむつはどこで買えばいいですか?
自治体が認めた事業者から、決まった上限額の範囲で購入する形が一般的です。横浜市では購入予定の事業者に見積書を作ってもらって申請し、神戸市では市が事業者に直接支払う方法をとっています。ドラッグストアで買った分があとから払い戻されるとは限らないので、申請前に窓口で流れを確認してください。