🌸 保護者のこころとくらし 発達障害を祖父母に理解してもらえない|伝え方の例文と「育て方のせい」への返し方
この記事の目次
「男の子なんだから遅いだけ」「甘やかすからワガママになる」「昔はそんな子いなかった」。お盆の帰省が近づくたびに、実家や義実家で言われた言葉がよみがえる。療育に通っていることも、まだ切り出せていない——。まず結論をお伝えします。祖父母に伝わらないのは、あなたの育て方のせいでも、伝え方が下手なせいでもありません。そして、全員に分かってもらうことがゴールでもありません。この記事では、伝わりやすい言い方の例文、「育て方のせい」への返し方、分かり合えないときの距離の取り方を整理します。
なぜ祖父母には発達障害の話が伝わりにくいのか
伝わらない原因の多くは、あなたと相手の間にある「見えている情報の差」です。祖父母の世代が子育てをしていたころ、発達障害という言葉は今ほど知られていませんでした。「昔はそんな子いなかった」は、本当にいなかったのではなく、名前がついていなかったという話でもあります。
さらに、祖父母が孫と会うのは年に数回、数時間です。パニックになる前の疲れ方も、寝つけない夜も見ていません。おとなしくしていた一日だけを見て「何も問題ないじゃない」と言ってしまう。そこには悪意より、情報の少なさがあります。
もう一つ。「育て方の問題では」という言葉は、自分の子育てを否定されたくない気持ちから出てくることもあります。相手が防御している状態では、正しい説明ほど届きにくくなります。
💡 まず知っておいてほしいこと
伝わらないのは、あなたの努力が足りないからではありません。理由は相手の中の古い常識と、会っている時間の短さです。祖父母全員に理解してもらわなくても、お子さんを守ることはできます。
「育て方のせい」ではないと、国の情報でも示されています
発達障害は生まれつきの脳の働きの違いによるもので、親のしつけや愛情不足が原因ではありません。これは家庭内の意見ではなく、公的な情報として明記されています。
政府広報オンラインは、発達障害は脳の働きの違いによるもので、決して本人の努力が足りないとか、親のしつけに問題があるというものではない、とはっきり説明しています。国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターも、生まれつき発達のしかたに凸凹がある障害として紹介しています。
同じセンターは、周囲の受け止め方にも踏み込んでいます。子どもがパニックを起こしたとき、叱って無理におさえつけるより、少し待つほうが早く混乱から抜け出せること。そして、周囲が知識をもって見守ってくれるだけでも、本人も家族もずいぶん楽になること。祖父母に伝えたい中身は、まさにここです。
「うちの家系にはそんな人いない」と言われたら
原因の話に引きずり込まれないことが大切です。誰のせいかという話に答えは出ませんし、出たとしても子どもの困りごとは減りません。「原因ははっきり分かっていないみたい。だから犯人探しはしないで、この子が困らない方法だけ考えることにしたの」。この一言で議論を閉じ、対応の話に場所を移します。
伝わりやすい伝え方4つのコツと、そのまま使える例文
診断名から入らず、困りごとと、うまくいった対応をセットで話すのが基本です。コツは4つあります。
😥 伝わりにくい言い方
- 診断名や検査結果から説明を始める
- 「理解してほしい」と気持ちを求める
- 一度の帰省で全部を伝えようとする
- お願いごとを5つも6つも並べる
😊 伝わりやすい言い方
- 目の前の困りごとと対応から話す
- 「先生にこう言われた」と第三者を主語に
- 今回はこれだけ、と話題を1つに絞る
- お願いは1回に1つだけにする
コツ1: 診断名ではなく、困りごとと対応を伝える
診断名は相手の中の古いイメージと結びつき、そこで話が止まりがちです。かわりに、実際に起きることと家でうまくいっている方法を並べます。
- NG: 「この子、自閉スペクトラム症の診断が出たの」
- OK: 「大きな音が苦手で、耳をふさいで固まっちゃうの。静かな部屋で5分休ませると戻れるから、そうさせてもらえると助かる」
コツ2: 主語を「専門家」にする
同じ内容でも、あなたが言うと「気にしすぎ」と返され、専門家の言葉にすると受け入れられることがあります。相手の防御を下げるための工夫です。
- NG: 「無理やり食べさせないでほしいの」
- OK: 「病院の先生に、無理に食べさせると余計に食べられなくなるって言われてて。ひとくちでOKにしてるの」
コツ3: お願いは1回に1つだけ
複数のお願いを並べると、相手には「全部を否定された」としか残りません。今回守りたいことを1つだけ選びます。
- NG: 「大声を出さないで、急に抱き上げないで、お菓子も勝手にあげないで」
- OK: 「今日はこれだけお願い。抱っこするときは、先に声をかけてあげてほしいの」
コツ4: 全部を分かってもらおうとしない
最初のゴールは、発達障害を正しく理解してもらうことではなく、子どもが嫌がることを1つやめてもらうことです。支援そのものを親戚から否定される場面については、特別支援学級は「ずるい」と言われたらも考え方の整理に使えます。
「そんなの個性」と言われたときの返し方
その場で言い負かす必要はありません。目的は勝つことではなく、話を終わらせて子どものそばに戻ることです。返し方の型を用意しておくと慌てずにすみます。
| 言われがちな言葉 | 受け流しの一言 |
|---|---|
| そんなの個性でしょう | 「そうだね、この子らしさもあるよね。そのうえで困ってることがあって」 |
| 甘やかしすぎじゃない? | 「厳しくしたら悪化するって言われてて、いま試してる最中なの」 |
| 男の子は遅いものだよ | 「そう言ってもらえると安心する。念のため見てもらってるところ」 |
| 昔はそんな子いなかった | 「今は分かるようになったんだって。早く分かると本人がラクらしいよ」 |
| うちの家系にはいない | 「原因ははっきりしないみたい。今できることだけやってる」 |
共通しているのは、相手の見方を否定せず、こちらの方針だけを短く置いて終わらせる形です。
⚠️ ここに注意
子どもの前で言い争わないことを最優先にしてください。自分のことで大人がもめている場面は、内容が分からなくても子どもに強く残ります。反論したくなったら別の部屋に移るか、後日電話で伝える形に切り替えます。
帰省が目前でも、その場でできる調整があります
理解を得る作業が間に合わなくても、環境を整える作業は当日でも間に合います。目指すのは祖父母の納得ではなく、子どもが安心して過ごせる時間です。
| 場面 | その場でできること |
|---|---|
| 滞在時間 | 泊まらず日帰りにする。「夕方から用事がある」と最初に伝えておく |
| 移動手段 | 可能なら車で行く。帰る時間を自分で決められる状態をつくる |
| 席の配置 | 祖父母と子どもを正面で向かい合わせにしない。斜めか隣にする |
| 逃げ場 | 空いている部屋・玄関・車のどれかを、子どもと自分の避難先に決めておく |
| 食事 | 食べられるものを一皿持参する。食卓での攻防そのものを減らす |
| 会話 | 発達の話題が始まったら「そうなんだ」で受けて席を立つ、と決めておく |
「もっと早く準備しておけばよかった」と思う必要はありません。当日の調整のほうが、事前の説明より効くことは珍しくないからです。
それでも分かってもらえないときの着地点
祖父母全員の理解を得ることは、ゴールではありません。子どもが安心して過ごせる状態を守ることをゴールに置き直すと、打つ手は一気に増えます。
- 会う頻度と時間を調整する: 年2回を1回に、1泊を日帰りに。距離を取ることは関係を切ることと違います
- 味方を1人つくる: 片方の祖父母やおじ・おばなど、話を聞いてくれる1人に絞って共有します
- パートナーに自分の親を担当してもらう: 義実家への説明は、そこで育った側が引き受けます
- 言い返さない定型文を決めておく: 「そうだねぇ」「考えてみるね」の2つで消耗が減ります
- その日のうちに吐き出す: 帰り道に誰かへ話すかメモに書く。ため込むと次が怖くなります
家庭の外の相談先も使えます。発達障害者支援センターや自治体の窓口は、子どもの発達だけでなく家族関係の悩みも受け止める場所です。連絡先が分からないときは発達障害の相談窓口の選び方を参考にしてください。
発達障害ナビポータルは、同じ悩みを持つ保護者の経験談が孤立感の解消につながる場合があるとして、親の会やペアレント・メンターを紹介しています。メンターは、発達障害のある子どもを育てた先輩保護者が同じ親の立場で相談に応じるしくみで、活動状況は地域により異なります。帰省のあとに落ち込みやすい人は、子育てに疲れた・限界と感じたらも読んでみてください。
祖父母が味方になってくれたら、頼めること
一度きっかけをつかめると、祖父母は大きな戦力になります。

- 1対1で遊んでもらう: 集団が苦手な子でも、大人と1対1なら落ち着けることがあります
- 短時間の預かり: 通院や面談の日に数時間見てもらえると、親の予定が動かせます
- きょうだいの相手: がまんしがちなきょうだいと過ごしてもらう役割は頼みやすいです
- 親戚の中での通訳役: 他の親戚に説明してもらえると、毎回同じ話をしなくてすみます
- 子どもを直接ほめてもらう: 大人からの一言は、子どもの自信につながります
祖父母向けの学びの場を探すより、親が学んだ関わり方を家庭で共有するほうが現実的です。具体的な方法は自宅でできるペアレントトレーニングにまとめています。
まとめ
- 伝わりにくいのは世代による情報の差と、会っている時間の短さが理由。あなたの育て方や伝え方の問題ではない
- 発達障害は脳の働きの違いによるもので、親のしつけが原因ではないと政府広報オンラインが明記している
- 伝えるときは診断名からではなく困りごとと対応から。主語を専門家にして、お願いは1回に1つ
- 帰省が目前でも、滞在時間・席の配置・逃げ場・持参する食事の調整は当日から効く
- ゴールは全員の理解ではなく、子どもが安心して過ごせる状態。会う頻度を調整し、味方を1人つくる
今夜はここまでで大丈夫です。明日やることは1つだけ、次に会う日の「逃げ場」を決めておくこと。空いている部屋でも、停めた車の中でもかまいません。伝え方の練習は、それができてからで間に合います。
よくある質問
祖父母に子どもの発達障害を伝えるとき、診断名は言ったほうがいいですか?
必ずしも診断名から入る必要はありません。診断名は相手の中にある古いイメージと結びつきやすく、話が止まってしまうことがあります。「大きな音が苦手で耳をふさぐ」「先に予定を伝えると落ち着く」のように、目の前で起きる困りごとと、うまくいった対応をセットで伝えるほうが伝わりやすくなります。診断名を伝えるかどうか、いつ伝えるかは保護者が決めてよいことです。
「育て方が悪いからだ」と義父母に言われました。どう返せばいいですか?
その場で言い負かす必要はありません。政府広報オンラインは、発達障害は脳の働きの違いによるもので、親のしつけに問題があるというものではないと明確に説明しています。「私もそう思って調べたけれど、育て方が原因ではないと国の資料にも書いてあった」と、事実だけを一度置いて話題を変える形で十分です。
お盆の帰省が目前で、もう準備する時間がありません。当日できることはありますか?
あります。滞在時間を短くする、子どもが一人になれる部屋や車という逃げ場を先に確保する、祖父母と子どもの席を正面ではなく斜めや隣にする、公共交通ではなく車で行って帰る時間を自分で決める、といった調整は当日でも効きます。理解を得ることより、子どもが安心して過ごせる状態を優先して構いません。
祖父母に理解してもらえないことを、誰かに相談できますか?
発達障害者支援センターや自治体の相談窓口では、子どものことだけでなく家族関係の悩みも相談できます。また地域によっては、発達障害のある子どもを育てた先輩保護者が相談に応じるペアレント・メンターや、親の会の茶話会があります。同じ経験をした人に話すだけでも、抱えている重さが変わることがあります。