🌸 保護者のこころとくらし 発達障害を本人に伝えるべき?告知のタイミングと小学生・中学生への伝え方
この記事の目次
お風呂あがり、髪をふいている最中に「ぼくって、なんでみんなと違うの?」と聞かれて、とっさに「違わないよ」と返してしまった。通級や放課後等デイサービスに行く理由をたずねられて、「お勉強を見てもらう教室だよ」とだけ答えた。診断を受けてから何か月もたつのに、本人には何も話せていない。そんな夜にこのページを開いた方へ書きます。
言えずにいるのは、子どもを傷つけたくないからです。その迷いは、まっとうな親心から来ています。
先に結論をお伝えします。発達障害の診断を本人に伝えるかどうかに、決まった年齢も期限もありません。 大事なのは「いつまでに」より「本人がどんな様子のときに、どんな言葉で」です。この記事では、タイミングの目安になる本人のサイン、伝え方の準備と流れ、小学生と中学生での違い、伝えたあとのことを順に整理します。思春期に入っている場合や、本人がうすうす気づいている場合の話も最後に置きました。
発達障害を本人に伝えるべき?迷ったときの考え方
伝える目的は、悪い知らせを渡すことではありません。本人が自分を知り、自分を責めずに済むようにするためです。
国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターは、伝える目的をこう説明しています。これまでうまくいかなかったことの理由を理解し、これからもっと自分らしく過ごすためのきっかけにすること。発達障害ナビポータルも、診断が年齢に応じた自己理解につながることを期待しています。
告知は「ラベルを貼る日」ではなく「説明がつく日」です。忘れ物や友達とのすれ違いが続くと、子どもは理由が分からないまま「自分がダメだから」と結論を出してしまうことがあります。理由を知ることは、その結論を書き換える材料になります。
一方で、診断を受けたその日に伝える決まりはありません。本人がまだ困りごとを自覚していない時期に、診断名だけを急いで渡す必要はないのです。診断そのものの受け止め方で迷っている場合は、発達障害の診断を受けるメリット・デメリットも参考にしてください。
告知のタイミングはいつ?年齢より「本人のサイン」で決める
タイミングは、カレンダーではなく本人の様子で決めます。発達障害情報・支援センターも、伝える機会は人生の中に何度もあるとしています。挙げられているのは、周りとの違いに気づく学童期、自信が下がりやすい思春期、進学や就職を考える青年期、職場で壁にぶつかる成人期です。
家で見えやすいサインと、最初にかける一言の例を表にしました。
| 本人の様子 | 何が起きているか | 最初の一言の例 |
|---|---|---|
| 「なんで自分だけ〇〇に行くの?」と聞く | 周りとの違いに気づき始めている | 「いい質問だね。ちゃんと話したいから、週末にゆっくり話そう」 |
| 「どうせ自分はバカだから」と言う | 理由が分からず自分を責めている | 「バカだからじゃないよ。理由があるの。今度一緒に考えよう」 |
| 発達障害という言葉をどこかで見聞きした | 自分と結びつけて調べ始めている可能性がある | 「どこで聞いたの?気になったことがあったら何でも聞いてね」 |
| 友達とのトラブルが続いて落ち込んでいる | 自信が下がり、説明を必要としている | 「〇〇が悪い子だからじゃない。やり方の違いがあるんだと思う」 |
表の一言は、その場で全部を説明するためのものではありません。質問をはぐらかさず、話す約束をするための言葉です。準備ができていないときは、「ちゃんと話したいから少し待ってね」と約束だけして、日を改めて構いません。
✅ 伝える準備ができているかの確認
- 本人が困りごとや周りとの違いを、自分の言葉で口にしている
- 親の気持ちが、落ち着いて話せるところまで整っている
- 本人の得意なことや好きなことを、具体的に3つ言える
- 主治医や支援者に、伝え方を一度相談してある
すべてそろっていなくても大丈夫です。2つ目の「親の気持ち」が整っていないときだけは、先に誰かに話を聞いてもらうほうが、本人との話し合いが落ち着いたものになります。
どう伝える?伝える前の準備と当日の流れ
伝え方の基本は、本人がすでに知っている具体的な困りごとから話を始めることです。いきなり診断名から入らないほうが、本人は自分のこととして受け取りやすくなります。
発達障害情報・支援センターは、本人に最適なタイミングで、本人が分かる言葉で、本人が納得できる説明の仕方で伝えることを勧めています。そのうえで、伝える内容として次の点を挙げています。
- 苦手なことは、見方を変えると得意なことにもなる
- 生まれつきの脳の特性によるもので、本人の努力不足のせいではない。ただし経験を重ねることで変わっていく部分もある
- 同じ診断名の人でも、一人ひとり性格も得意なことも違う
- 診断がある人とない人は、くっきり線で分かれるものではない。診断がなくても似た特徴を持つ人はたくさんいる
口で話すだけでなく、メモに書いて渡したり、絵や図を使ったりすると、あとから読み返せて記憶にも残りやすくなります。

たとえば紙を半分に折って、左に「にがてなこと」、右に「とくいなこと」を本人と一緒に書き出すやり方があります。「にがて」の欄に書いたことの横に「こうすると楽」という工夫を書き足していくと、話の終わりが「できないこと」ではなく「やり方」になります。
当日の流れは、次のように考えると組み立てやすくなります。
場所は家の中、時間に追われない休日の昼間が向いています。寝る直前や叱ったあとは避けてください。話すのは本人がいちばん安心できる人が基本で、診察の場で医師から説明してもらう分担もできます。
小学生と中学生で変える伝え方
年齢で変わるのは、診断名をどこまで出すかと、本人にどこまで選ばせるかです。
小学生には、診断名よりも「〇〇なタイプ」という言い方のほうが入りやすくなります。「頭の中にたくさんの音が一度に入ってくるタイプ」「やることを覚えておくのが少し苦手なタイプ」のように、本人の実感と結びつく言葉を選びます。好きなキャラクターや身近な人の得意・不得意にたとえるのも手です。診断名は、本人が「名前はあるの?」と聞いてきたときに伝えれば十分です。
中学生になると、本人がすでに自分で調べている可能性があります。ネットで見た情報に不安をふくらませていることもあるので、隠すより、正確な情報をこちらから渡すほうが安全です。診断名を伝え、どこで診断を受けたのか、何が分かったのかを具体的に話します。この年齢では、友達や先生に話すかどうかを本人が決めていいと伝えることが特に大切です。中学生の時期の支援全体については発達障害のある中学生への支援にまとめています。
どちらの年齢でも、1回で理解してもらおうとしないでください。浜松医科大学の研究グループは厚生労働科学研究の発表会で、専門家と親が協力し、少しずつ継続して本人の自己理解を支える大切さを強調しています。
伝えたあとに起きやすいことと、見守り方
伝えたあとの反応はさまざまです。ほっとした顔をする、怒る、泣く、まったく興味がなさそうにする。どれも、本人が受け止めている途中の姿です。
先ほどの研究グループの報告では、すでに本人に診断を説明していた親に振り返ってもらったところ、「本人も知ってよかった」という答えが44%ありました。一方で、「反省・後悔が残った」という答えも26.8%ありました。同じ報告の医師への調査では、最初から診療の計画に入れて本人への説明をしていると答えた医師は半分でした。伝えること自体より、準備と伝え方で受け止め方が変わるということが、ここから読み取れます。
伝えたあとの数週間は、こんなふうに過ごすと安心です。
- 話の続きを急がない。本人から聞いてくるまで待ち、聞かれたら短く答えます
- 困った場面で「さっきの話」とつなげる。「これが前に話した、音が苦手なところだね。耳せんを使ってみる?」
- 誰に話すかは本人と決める。きょうだいや祖父母に伝える範囲も、本人の気持ちを聞いてからにします。きょうだいへの関わりはきょうだい児のケアも参考にしてください
- 「障害」という言葉を叱る材料にしない。「障害があるんだから気をつけなさい」は、告知の意味をひっくり返してしまいます
落ち込みが2週間以上続く、眠れない、学校に行けなくなったといった変化が出たときは、主治医や学校のスクールカウンセラーに早めに相談してください。都道府県と政令市にある発達障害者支援センターでも、本人と家族の相談を受けています。心や体の不調として出てくる二次的な問題については、発達障害の二次障害とはで詳しく扱っています。
💡 うまく言えなくても、やり直せます
言葉につまった、泣いてしまった、途中で話をそらしてしまった。それでも大丈夫です。告知は1回で終わる発表ではなく、何年もかけて続けていく会話です。「この前はうまく話せなかったから、もう一回話してもいい?」と言える親の姿そのものが、子どもにとっての安心になります。
思春期以降や、本人がもう気づいている場合
「小さいうちに伝えればよかった」と思っている方へ。思春期や青年期に伝えるのは、手遅れではありません。 発達障害情報・支援センターが挙げている伝える時期にも、思春期、青年期、成人期がはっきり含まれています。進路や就職を考える時期は、自分の得意・不得意を知る必要が高まるぶん、話が本人に届きやすい時期でもあります。
本人がうすうす気づいていそうなときは、「実は前から気づいてた?」と、本人の知っていることを先に聞くのが入り口になります。親の説明より先に、本人がどう理解しているかを聞くと、誤解している部分だけを直せば済むことがあります。
もし本人が別のところから先に知ってしまい、「なんで黙ってたの」と責められたら、言いわけより先に気持ちを受け止めてください。「傷つけたくなくて、言い方をずっと考えてた。黙っていてごめんね」と、理由をそのまま伝えて構いません。そこから先の会話は、いつからでも始められます。
まとめ
- 発達障害の診断を本人に伝える目的は、悪い知らせを渡すことではなく、本人が自分を知って自分を責めずに済むようにすることです
- タイミングは年齢ではなく、周りとの違いに気づく、自分を責める言葉が出るといった本人のサインで決めます
- 伝えるときは、本人が知っている困りごとから始め、得意なことと工夫を同じ重さで話します。メモや図を使うと残りやすくなります
- 小学生には「〇〇なタイプ」という言葉で、中学生には正確な情報と、誰に話すかを本人が決める権利を渡します
- 告知は1回で終わりではなく、何年もかけて続けていく会話です。思春期以降でも、本人が先に気づいていても、始めるのに遅すぎることはありません
今夜はここまでで大丈夫です。明日やることは1つだけ、本人の得意なことや好きなことを、メモに3つ書き出してみてください。いつ話す日が来ても、その3つが話の支えになります。
よくある質問
診断名そのものは言わずに、特性だけ伝えるのでもいいですか?
はい、段階を分けて構いません。小学校低学年のうちは「音が大きいと疲れやすいタイプ」のように、本人が困っている場面と対処法だけを先に話す家庭もあります。ただし、本人が自分で調べられる年齢になったら、診断名もいずれ伝える前提で準備しておくと、あとで別のところから知って傷つく事態を避けやすくなります。
親からではなく、主治医から伝えてもらうことはできますか?
相談できます。診察の中で医師から本人に説明してもらう、親が話したあとに医師から補足してもらう、など分担の形はいくつかあります。どちらが話すにしても、事前に医師と「何を・どの言葉で伝えるか」をすり合わせておくと、本人が受け取る説明がぶれません。
きょうだいにも伝えたほうがいいですか?
本人への告知とは別に考えて大丈夫です。きょうだいには、診断名よりも「〇〇は大きな音が苦手だから、こうしてくれると助かる」という具体的な関わり方から伝えるほうが伝わります。本人が自分のことをきょうだいに話されたくない場合もあるので、本人に伝えたあとなら、誰に話すかを本人と相談して決めてください。
伝えたら「障害だから仕方ない」と、努力しなくなりませんか?
そう心配する保護者は多いのですが、伝え方で方向は変えられます。「だからできなくていい」ではなく「だからこのやり方を使うとうまくいく」という形で、苦手さと工夫をセットで伝えるのがこつです。言い訳のように聞こえる言葉が出たときは、責めずに「じゃあ、どんな工夫ならできそう?」と一緒に考える時間にしてください。